関東第一・米沢貴光監督、指導者を志した原点とは
【球界ここだけの話】8月に甲子園球場で行われた第106回全国高校野球選手権大会。関東第一（東東京）は23日の決勝で京都国際に延長十回タイブレークの末に1－2で敗れ、春夏通じて初めての優勝をあと一歩のところで逃した。母校の監督に就任して25年目。夏は初めて決勝まで進んだ関東第一の米沢貴光監督（49）は深紅の大優勝旗を逃し、甲子園の空を見上げた。 「よくやってくれた」とナインをねぎらい、「また戻って来られるように一から出直しだな」と決意を示した。甲子園を「毎年、毎年来たい場所。帰れば、次はいつ行けるんだろうという怖さと闘います。ただ、やっぱり頑張れば報われることもある」と表現した。 野球部OBで高校時代は一塁手や投手として活躍。中大、シダックスと野球を続け、社会人2年目限りで現役を引退。翌2000年4月から関東第一のコーチを務め、同8月に監督に就任した。同校の事務職員として勤めている。 高校野球の指導者を志した原点には、自身の高校時代の最後の打席で味わった〝悔しさ〟がある。米沢監督が3年生で迎えた1993年東東京大会決勝・修徳戦の九回。関東第一はのちに巨人や米大リーグで活躍した高橋尚成から2点を挙げ、6－7と1点差に迫っていた。 なおも2死二塁という同点のチャンスで「6番・投手」の米沢に打席が回ってきた。フルカウントから2球続けてファウルで粘ったものの、最後は外角の直球に手が出ず、見逃し三振。甲子園には届かなかった。「僕の中では一番の大きな出来事。それが『指導者になりたい。なって甲子園に』というところにつながっている」と話す。いつもは「打ってやる。絶対返してやろう」という強い気持ちで打席に入っていたが、最後の打席では「頭が真っ白だった」。そんな自身の経験は選手たちに伝えてきた。 就任当初は厳しく指導することもあったが、試行錯誤の末に現在は選手の自主性に重きを置き、怒鳴ったりはしない。実践練習、自主練習に多くの時間を費やし「主役は彼ら」と自身の野球観を押し付けることなく、その年の選手たちの特徴を最大限に生かすスタイルのチームを作ることを信条にしている。「背伸びをしない」と今年は投手を中心とした〝守り勝つ野球〟で母校の歴史を作ったが、「10点取りたいとも正直思います」と笑った。（尾﨑陽介）
