「まったく魚臭くなく、初めて味わう美味しさ」 黒木瞳が絶賛する小倉の郷土料理「ぬか炊き」
矢野)うちのぬかみそは持ち味をそのまま表現してくれるのですよ。 黒木)私はサバが好きでした。 矢野)サバも評判がいいです。ぬかみそが多いから。 黒木)食べやすいということですか? 矢野)ぬかみその旨味成分が強いから、しっかりとした味になっているのだと思います。 黒木)そうなのですね。 矢野)イワシは220匹炊くので、ぬかを多く足しすぎると(ぬかの)熟成が追いつかず、保存できなくなってしまいます。サバは120切れなので、ぬかを少々入れても大丈夫ですが、大量生産はできません。 黒木)その日につくったものはその日に出すのですか? 矢野)真空パックすると4週間ぐらい日持ちします。 黒木)そんなに? 矢野)一般の業者だとレトルトにして、1~2年持たせていますけれどね。私の場合は4週間ぐらいを期限に販売しています。 黒木)販売されているのですか? 矢野)遠くの地域にも送れます。ホームページで注文を受けています。 黒木)私は、このなかではサバが好きです。全部食材によってぬかみその味が違うのですよね。魚臭くないです。初めての味でした。 矢野)優しいでしょう? 黒木)普通、イワシは食べにくいのですが。 矢野)骨がね。 黒木)ぬか炊きにすると食べやすいですね。 矢野)青魚独特の臭みがないですものね。
矢野寿美子(やの・すみこ)/「味処 矢野」女将 ■福岡県北九州市のJR小倉駅近くにある海鮮丼&ぬか炊き専門店「味処 矢野」。 ■小倉の郷土料理「ぬか炊き」は、母が残し80年継いできた“ぬか”と、女将の工夫と研究で独自の味を実現。 ■もともと漁師だった夫が始めた海鮮丼屋さん。夫の体調不良もあり、寿美子さんが切り盛りすることになったが、独自の味が人気で口コミでどんどん広まり、地元の人に愛されるお店に。 ■本人はジャズシンガーでもあり、店ではジャズがかかっている。 <ぬか炊き(ぬかだき)> ■江戸時代から豊前国に伝わる、イワシやサバといった青魚をぬか床(ぬかみそ)で炊き込んだ北九州小倉の郷土料理。 ■江戸時代初期、小倉城を築城し、豊前国を治めた細川忠興のころにぬか漬けが伝わり、その後の国替えで小倉藩主となった小笠原忠真もぬか漬けを好んで食べていたようで、小倉城下の人々へも推奨したことからぬか漬けが広まったと言われている。 ■その後、北九州近郊で獲れる新鮮なイワシやサバをぬか床で炊き込んだ「ぬかだき」が保存食として食されるようになった。ぬか床はどの家庭でも非常に大切にし、小倉では嫁入り道具として代々親から子に受け継がれて40年、50年と経ったぬか床は珍しくなく、100年を超えるぬか床を持っている家庭も少なくない。