創業86年の問屋をネット通販に業態転換、門外漢の工具業界に飛び込んだトップセールスマンの挑戦 結婚きっかけで跡継ぎに、従業員ゼロからの再出発
▽大切なのは「思ったことを恐れずに言える環境」 1人で始めたネット事業は、今や出身国もさまざまな30人弱の従業員で回している。一見、風変わりな取り組みでも、会社の成長を思って積極的に採用。その背景には、社長就任以来、大切にしてきたことがあった。 「とにかく従業員の心理的安全性の確保が一番。思ったことを恐れずに言える環境が大切です。社員を外国人の名前で呼ぶイングリッシュネームを2010年に導入しました。取引先の台湾のメーカーが導入していて、いいなと思ったからです。社長とか課長とか肩書で呼ぶのが嫌だったのもあります。好きな芸能人やキャラクターなど、おのおの自分で決めてもらいます。僕はジャック。米国のテレビドラマ『24―TWENTY FOUR―』の主人公ジャック・バウアーが由来です。従業員は26人ですが、本名をほとんど使わないので、取引先など社外からの問い合わせで名字を言われた時に、一瞬、誰だっけ?となることもあります」
「他にも、大都の創業日に運動会を開催したり、毎週月曜の夕方に15分間、全社員で掃除をしたり、社内で横のつながりが生まれやすいような取り組みを進めています。通常の業務だけだったら、システムエンジニアと経理が雑談しお互いの意外な一面が見られることもないですからね」 「もちろんこういう風土が合わない人もいます。15分の掃除をするより、業務をした方が合理的だと言う人もいますが、結果的に業績が上がっているのが答えだと思います。イベントを通じてお互いの理解が深まり、生産性が上がって、残業が減り、収益がよくなる。コロナ禍で定着したリモートワークが主流になる中、安定した業績を維持するには社員の信頼が大事です。イングリッシュネームも掃除も、遊びでやっている訳ではありません。業績を上げるために必要な戦略だと考えて います」