<センバツ2022・ともに咲く>広陵/上 悔しさを力に変え ライバルに負けて成長 /広島
第94回選抜高校野球大会に3年ぶりに出場する広陵。1月28日に吉報が届いた際、選手たちは新型コロナウイルス感染予防のため歓声を上げず静かに喜びをかみしめたが、帽子とマスクの間からのぞく目には、確かな自信をみなぎらせていた。センバツで優勝3回、準優勝3回を誇る「春の広陵」はこの春、19年ぶりの頂点を見据える。 2021年7月に発足した新チームにとって、秋のスタートは決して満足のいくものではなかった。長年のライバルとも言える広島商と対戦した、10月2日のしまなみ球場(尾道市)での県大会準決勝。投手陣は13安打を浴び、打線も10残塁で好機を生かし切れず4―8で敗戦。相手に終始ペースを握られての完敗だった。 「全国制覇」を目標に掲げるチームにとって、余りにも早いつまずき。試合終了後、選手たちを集めたミーティングで中井哲之監督(59)は「(このチームは)1度死んだ身だ」と厳しい言葉を投げかけた。歯を食いしばりながら聞いていた川瀬虎太朗主将(2年)は「実力がまだまだ足りないと、全員が思い知らされた試合だった」と振り返る。 翌日の3位決定戦に勝利すると、中国地区大会までの約3週間、選手たちは「次はない」と厳しい姿勢で練習に取り組む。打撃練習でボール球に手を出した場合、安打を放ってもカウントせず、互いに高いレベルを追求し合って実力を磨いた。 そして迎えた中国地区大会。初戦で倉吉総合産(鳥取)に6―0で勝利すると勢いそのままに勝ち上がり、決勝で広島商にリベンジの機会を得た選手たちは、県大会とは見違える試合を見せる。 一回に3番・内海優太選手(2年)の2点本塁打を皮切りに着実に得点を重ねると、森山陽一朗投手(同)と岡山勇斗投手(1年)のリレーで零封し、7―0での完勝。試合後、川瀬主将は「同じ相手に二度負けるわけにはいかなかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。 中井惇一副部長(27)は「負けを知ることが一番の強さにつながった」と秋の選手たちの成長ぶりに目を細める。悔しさを力に変えたチームは、明治神宮に舞台を移すと、全国の強豪相手にさらなる健闘を見せる。【根本佳奈】=次回は6日