【アメリカ大統領選】意外と知らない、選挙グッズの利益販売と知的財産の保護
11月5日(現地時間)、アメリカ大統領選の投開票が行われます。自国内のみならず日本を含む世界全体に影響を与えるポストを争う今回の大統領選では民主党のカマラ・ハリス副大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領が対決しています。アメリカ大統領選では、選挙キャンペーンでのスローガン、ロゴ、BGM使用、映像素材の著作権・商標保護などがあるのを知っていますか。商標や著作権といった知的財産権に関する業務を行う弁理士の筆者が、紹介したいと思います。 【写真】衝撃だった トランプ前大統領が銃撃された直後の姿!
トランプ前大統領はレーガン元大統領のスローガンをグッズに
まず、商標についてです。トランプ前大統領は「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(MAGA)」というスローガンを用いたキャップをグッズとして販売しています。これは1980年のアメリカ大統領選挙で、ロナルド・レーガン元大統領が使用していた言葉なのですが、トランプ前大統領はこの言葉を商標登録し、選挙関連のグッズ販売に使用し、結果的に大きな収益を生むブランドに成長させました。 日本の感覚だと、このあたりで本人が「商売していいの?」などと思いませんか。日本では公職選挙法で禁じられている頒布行為です。しかし、アメリカでは「選挙キャンペーンにおける商品販売」による利益が選挙資金として報告される限り、資金調達の手段として認められています。この場合、候補者自身が商標を登録し、自らの商品を販売することも問題ありません。第三者が候補者の顔などを付した商品を無許可で販売する場合は、肖像権の侵害であるとして訴訟に発展する可能性があります。しかし…。
候補者の顔を使った商品販売の問題
大統領選挙期間中、候補者の顔を使用したTシャツやマグカップなどのグッズが民間人によって市場に出回ることが多くあります。これらの商品は大人気なのですが、肖像権や著作権の問題は大丈夫なのでしょうか。 アメリカの第一修正「First Amendment」の保護のもと、政治的キャンペーンに関連した表現活動が強く保護されています。例えば、トランプ元大統領の顔をあしらった「MAGA」Tシャツなど、政治的メッセージとして使用される場合、政治家の肖像権の主張は表現の自由によって認められないことがあります。 本来、第三者が同様の商品を無許可で販売する場合は、肖像権の侵害として訴訟に発展する可能性があるものの、過去の判例でも、公共の関心事として表現の自由に該当するとの判決なども出ているなど、民間人による政治的表現が広く保護される例があります。つまり、勝手に利用してよいと判断される可能性も大いにあります。