<春に挑む2024・神村学園の軌跡>/下 凡事徹底 常勝校の道 /鹿児島
「九州地区で選出いたしましたのは熊本国府高校、明豊高校、神村学園……」。鹿児島県いちき串木野市の神村学園で、宝馨・日本高野連会長が発表する声がネット中継を通して見守る選手たちに伝わる。「ヨッシャー」の大歓声。後は聞き取れなくなるほどだった。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 神村慎二・神村学園理事長が「バンザーイ」と声をからし、小田大介監督が「センバツに向け一つ二つギアを上げ、(昨夏の甲子園4強の)先輩たちに続こう」と選手に語り掛けた。 九州地区大会4強で選出は有力視されていた。それでも選手たちは不安だった。九州大会準々決勝敗退校と神村学園が当落線上にあるとする予想もあったし、先に発表された21世紀枠で、同じ鹿児島県内の鶴丸が補欠校になったのを知ったばかりでもあったからだ。 主砲の正林輝大(2年)は「いろんな声を聞き、選ばれるのかどうか半信半疑だった。夏の4強を超えられるように挑む」。主将の川下晃汰(同)も「ほっとしたが、安心せずにしっかりスタートラインに立ち、詰めるべきを詰める」と気を引き締めた。 センバツは、甲子園初出場だった2005年、プロに進んだ野上亮磨投手(元西武、巨人)を擁し準優勝。小田監督の就任翌年の14年、15年にも連続出場した。夏は17、19、23年と甲子園の地を踏んだが、センバツ出場は15年の後、長いブランクに入っていた。22年秋の九州地区大会県予選は優勝したが、九州地区大会で初戦敗退するなどして届かなかった。 「常勝校の条件」。野球部グラウンドのトイレの壁に張ってある部訓だ。歴代の選手たちがかみしめてきた。「常勝校は見ていなくてもしっかりでき、弱小校は見ていなくては手を抜く。常勝校は自分たちのプレーに徹し、弱小校は相手を野次(やじ)る……」。小田監督が掲げた。 紆余(うよ)曲折を経て理想の常勝校に手が届きつつある神村学園。凡事徹底、走姿顕心(そうしけんしん)、全力発声……。他にも数々のスローガンがグラウンドに掲げられている。昨年末には女子駅伝部が全国制覇。野球部員も校内でテレビ中継を見守り、大声援をおくった。野球部員たちも、横断幕を手に女子駅伝部員の帰校を祝福した。日本一のパワーをお裾分けしてもらい、次は自分たちだ。おごることなく、春に挑む。【梅山崇】