「対話を重ねていくから、やっぱり映画の現場が好き」『ぼくのお日さま』若葉竜也が考えた「愛」
「奥山監督作品で、池松さんが出演するならぜひ」
――若葉さんは、どういう経緯で五十嵐役を知ったんですか? 若葉 別の映画に向けて準備していたタイミングでした。共通の知人が、「池松さんが出演する映画に、若葉の名前があるらしいよ」って教えてくれたんです。詳しく聞いたら、監督は奥山さんだと知って「すごく興味ある」と思って、「プロットと台本をください」とすぐに伝えました。 ――すでに奥山監督の存在はご存じだったんですね。 若葉 そうですね。監督が撮影した『僕はイエス様が嫌い』は、周りからの評価が高かったですし、僕自身も興味があったので拝見していました。その時の演出が素晴らしかったので、ぜひご一緒したかったんです。 五十嵐役を僕にあて書きをしたという経緯は知らなかったんですが、いただいた台本を読んだら求心力がすごくて、「これはいいものができるかも」と感じました。実際、ご一緒したいキャストの方々が集まっていたし、主演の池松さんとは、対話しながら演じられると思っていたので、「ぜひ出演します」とご連絡しました。 奥山 若葉さんの出演する作品は色々見てきましたが、今作ではこれまで観たことのない若葉さんが味わえると思います。衣装合わせの前に、二人きりで話す時間をいただいたのですが、その時に「過去にも同性愛者の役をご依頼いただいたことはあるけれど、その時は踏み出さなかった」とお話されていたので、出演を決心いただけたことが嬉しかったですね。と同時に、これは責任重大だ、と。
吃音や同性愛を物語に取り入れた理由は?
――吃音や同性愛を取り入れた理由はなぜですか? 奥山 映画祭でQ&Aを行うと、「多様性を描こうとしたんですか?」と聞かれることもあるんですけど、その思いが先行したわけではないんです。表現が難しいのですが、自分がこれまでに好きだった映画を振り返りながら、心から自分が作りたいと思える映画を突き詰めていったら自然とそうなった、としか言いようがないといいますか。 とはいえ、どちらも安易に取り入れられるものではないので、特に吃音に関しては当事者の方々への取材を繰り返しました。その過程を通して、吃音や同性愛を個性として描くのではなく、ごく普通にそこにある世界を描きたいと思ったんです。特別視するものでなければ、当然、距離を置いたりするものでもないというか。 ――そう思ったきっかけは何ですか? 奥山 一番のきっかけは、吃音のある小学生たちが集まるサマーキャンプに参加したことです。夜のディスカッションで、小学四年生の女の子が、「クラスの友達に吃音を理解してほしいとか、学んで分かってほしいとか別に思わない。ただ放っておいてほしいんだよね」と話していたのが印象に残りました。多分それって、吃音だけに関わらず様々なことに通じる想いなんじゃないかなと思ったんです。 それで、吃音のあるタクヤにはコウセイという親友、荒川には五十嵐という恋人ができていきました。ただただ寄り添って、絶対に肯定してくれる、そんな人物を近くに置くことがもしもできたら、自分にも吃音や同性愛を描けるのではないかと思ったんです。