韓国メイクと加工アプリの影響で変化した“すっぴん”の定義 美容医療においても変化より“ほどほど整形”が主流に
◆新しい自分でなくいまの自分を魅力的に…“ほどほどの整形”へのニーズ変化も
──ほどほどに、ということは体への負担も少ないのでしょうか。 【實藤健作さん】 それこそ生まれ変わり級を求める施術は切開なども伴いますし、ダウンタイムも長くなりますので、ある程度の覚悟も必要だと思われます。一方で近年は、美容医療器具や製剤の技術革新でダウンタイムが短い施術も増え、多様な“ほどほどニーズ”に応えられるようになりました。またカラーコンタクトやアートメイクなど多様な美容グッズもあります。そうした商品や“ほどほどの整形”を活用しながら、普段は自信を持ってすっぴんで過ごし、ここ一番の時だけメイクをする。“肌育”が人気となっているのも、そうしたライフスタイルに憧れる人が増えているからではないでしょうか。 ──「クアンクメイク」は抜け感のあるすっぴん美肌が特徴です。しかしに投稿されている写真の肌はお人形さんのように毛穴が全くなく、どこか塩化ビニールっぽさもあり、「むしろ不自然ではないのか?」とも思うのですが、先生はどうお考えですか? 【實藤健作さん】 それはやはり写真加工されているからでしょう。ただそれを不自然と感じるか、すっぴんと感じるかは価値観の違いかもしれません。繰り返しになりますが、現代の“すっぴんの定義”は曖昧です。また先ほど最近は“ナチュラル志向”になっていると言いましたが、この言葉の定義も難しく、患者さまの考えるナチュラルと私の考えるナチュラルは違うかもしれません。そうした“ふわっとした要求”が多くなっているぶん、カウンセリングはますます重要になっています。 ──クアンクメイクのようなすっぴん風の美肌は肌育で実現可能ですか? 【實藤健作さん】 クリニックなら「一撃で毛穴が目立たない肌になれる」と思っている方は意外と多いのですが、それはまず不可能です。美肌は積み重ねで実現するもの。食生活や睡眠、日頃のケアも影響します。 ──加工アプリによって自己イメージが高まる一方で、鏡を見れば“本当の自分”が映し出されます。それによって美の追求が煽られる──といった現状をどのようにお考えですか? 【實藤健作さん】 加工アプリの影響は感じますが、それを否定するつもりはありません。患者さまの理想や叶えたいイメージに寄り添うのが美容医療の役割ですので、大切なのはカウンセリングでご要望を深掘りすること。それはいつの時代も変わらないことであり、実現不可能なことはきちんと説明した上で希望のすり合わせを行います。また、カウンセラー主体のクリニックでは医師に決断権がない場合もありますが、共立美容外科では医師がカウンセリングを行い、医師の判断のもと施術を行います。そのため「この患者さまに施術は不要」と医師が判断した場合は、ドクターストップをかけることもあります。 (文/児玉澄子) 共立美容外科 大阪・梅田院院長 實藤健作(さねふじ けんさく)先生 2003年、長崎大学医学部医学科を卒業。同年、九州大学医学部消化器総合外科に入局後、九州大学付属病院に勤務。 2004年、国立病院機構別府医療センターに勤務。 2005年、西有田共立病院に勤務。 2006年、九州大学大学院に入学。 2009年、医学博士号を取得(甲号)。同年、九州大学大学院を早期卒業し、新中間病院に勤務。 2010年、大分赤十字病院に勤務。 2014年、宗像医師会病院に勤務。 2017年、広島赤十字原爆病院に勤務。 2018年、大分赤十字病院に勤務し、第一外科副部長就任。 2021年、某大手美容クリニックに入職。 2022年、共立美容外科に入職し、翌年に大阪・梅田院の院長就任。