韓国メイクと加工アプリの影響で変化した“すっぴん”の定義 美容医療においても変化より“ほどほど整形”が主流に
◆“すっぴん”本来の意味合いが時代にそぐわない? 韓国メイクの影響もありナチュラル志向に
──「こういう顔になりたい」と見せるアイドルや芸能人の写真も加工済みのものが多いですか? 【實藤健作さん】 一概には言えませんが、芸能人のグラビアもある程度の加工・修正をしていますよね。ただいまは誰でも高解像度の写真を撮影でき、加工も手軽にできますので、むしろ一般の方の写真の方がインパクトを出せるのかもしれません。おそらくSNSで拾ったのであろう、人間の骨格ではあり得ない鋭角な顎の写真を「こうなりたい」と見せられたこともあります。医療技術を用いてもそれは実現不可能だと説明はしましたが──。ただ、そこまで極端ではなくても、加工済みの“すっぴん風”写真を現実と認識している方は非常に多いです。 ──先ほど「すっぴんの線引きが難しくなった」とのことですが、すっぴんとは“完全にノーメイクな状態”を指すのではないのですか? 【實藤健作さん】 本来はそうですね。ただいまはアートメイク(皮膚の表層部に色素の入った薬液を注入していく施術)やカラーコンタクト、まつ毛エクステなどを付けた状態を含めて“すっぴん”“素の自分の顔”と認識している方も多いのではないでしょうか。メイクを落としてもその状態がキープされるわけですから。また加工設定済みのカメラで撮れば、ノーファンデでも毛穴のない美肌が映し出されますよね。そうしたさまざまなツールや選択肢があるいま、“すっぴん”という言葉から想起されるイメージは、世代や個人によってもバラつきがありますし、本来の意味合いが時代にそぐわなくなっているのかもしれません。 ──2022年には韓国からの化粧品の輸入額が、30年近くトップだったフランスを上回り、美のトレンドが韓国から発信されることが増えています。なかでも最近は「クアンクメイク」と呼ばれる“すっぴん風メイク”がトレンドです。Kビューティーへの憧れは美容医療の現場でも感じますか? 【實藤健作さん】 「クアンクメイク」に通じるのかもしれませんが、かつて以上にナチュラル志向になっています。二重整形も最近はくっきり・はっきりというよりも、まぶたの食い込みが強くない緩やかな二重が好まれます。唇も一時期はM字リップがもてはやされましたが、最近はむしろコンプレックスだとおっしゃる方もいます。唇にヒアルロン酸を入れるにしても厚くならず、それでいてぷるんと潤いのある唇にしたいという要望が多いですね。 ──顔の全パーツを整形したことを公言するインフルエンサーが「整形のコツは、すっぴん軸」と語っています。“整形=変化を求めるもの”ではなくなっているのでしょうか? 【實藤健作さん】 変化はしたいけれど、大幅には変化したくないという方は増えています。かつて整形には「新しい自分に生まれ変わりたい」というニーズがありましたが、最近はむしろ「いまの自分にプラスアルファしてより魅力的に」という志向になっています。何事もやりすぎず、ほどほどに。“すっぴん軸”という志向もその現れかもしれないですね。