五輪まであと5年 東京に道路はまだ必要なの?
都の道路完成率は62%
東京都の道路計画は、1946(昭和21)年に立てられた戦災復興計画事業からスタートしました。そのとき34の放射道路と9の環状道路の整備計画が立てられました。しかし、そこで立てられた道路計画は遅々として進みませんでした。 道路建設のスピードを少しでも改善しようと、東京都は道路を計画的かつ効率的に整備することを目的にした第1次事業化計画を1981(昭和56)年に策定します。それから現在に至るまで、第4次にわたって都市計画道路の整備方針をまとめています。 「都市計画道路の事業化計画は東京都だけで独断的に決めているわけではありません。有識者にも意見を聞き、さらに関係する市町からもヒアリングしています。さらにパブリックコメントも募集して、幅広い意見をもとにして決定しています。道路は10年~20年という長い期間をかけて建設するものですから、10年単位で見直し作業も行っています。いったんは事業化計画に盛り込まれたにもかかわらず、社会情勢が変化してしまって着工されないまま計画を変更した補助164号線(原宿駅付近の渋谷川が暗渠化された道路)や白紙撤回された道路もあります」(同) 現在、東京都内で都市計画決定された道路の総延長は約3200キロメートルにも上ります。そのうち完成した道路は環状7号線や国道246号線で知られる放射第4号線などがあり、完成率は62パーセントしかありません。戦後、東京都は環状道路の建設を推進してきましたが、平成に入ってから放射線の建設に重点をシフトさせています。さらに、最近では多摩地区の道路整備に力を入れています。
火災時の延焼帯やにぎわい創出も
一方で日本は人口減少社会に突入し、さらに自動車を運転できない高齢者も増えています。これ以上、道路は必要なのでしょうか? また、前回のオリンピック時に整備された道路も供用開始から50年以上が経過しました。それらの道路には経年劣化による損傷も見られます。メンテナンスにかかる費用も必要になる中で、新しい道路を建設する財源はあるのでしょうか? 「道路は自動車のために建設すると思われがちですが、道路の役割はそれだけではありません。例えば、火災時に延焼帯や都市緑化のためにも道路は必要ですし、上下水道などを収容する役割も道路が担っています。また、都内には消防車や救急車が入っていけないような狭い道路も多くあります。都民の生命・財産を守る上でも、道路を整備する必要はあると考えています」(同) 舛添要一都知事は、道路政策の一環として「東京シャンゼリゼプロジェクト」を始動させています。同プロジェクトでは、歩道に店舗などを設置できる特例措置を設け、街の活性化につなげようとしています。現在、環状2号線(通称:新虎通り)の一部で、実験的にオープンカフェがオープンしています。 道路は時代とともに使われ方も変化しています。東京五輪まであと5年。それまでに、東京の道路はどう変わっているのでしょうか? (小川裕夫=フリーランスライター)