レンジローバーのV8を「3モーター」に交換! 感動モノの速さと洗練性 JIAチーフテン EVへ試乗
1台に4000時間以上を費やし電動化
世界には、バッテリーEVのレンジローバーを待ち望んでいる人が大勢いる。既に1万6000名を超える希望者が、発表予定の新モデルへ手付け金を支払ったとか。確かに、類まれな豪華さとゼロエミッションを組み合わせた大型SUVは、魅力的かもしれない。 【写真】レンジローバーのV8を3モーターに交換 JIAチーフテン EV 電動化されるクラシックたち (134枚) ファッショナブルなエレクトロモッド(電動化)・モデルなら、さらに訴求力は高いと感じるクルマ好きがいるかもしれない。そう考えたのが、グレートブリテン島の南部、オックスフォードシャー州に拠点を置くJIA社だ。 規模の小さな同社はレストモッドを得意とし、見事な完成度のジェンセン・インターセプター FFで名声を掴んだ。その後、クラシック・レンジローバーのフロントへ、シボレーのV8エンジンを押し込んだチーフテンを開発。知る人ぞ知る存在になっている。 彼らが最近発表したのが、そのバッテリーEV版。今回試乗した、チーフテン・レンジローバー EVだ。 クルマへ詳しくない方でも想像できると思うが、クラシックレンジを電気の力だけで走れるようにする仕事は、簡単なものではない。JIA社は、丁寧なレストア作業を含めて、1台に合計4000時間以上が費やされると主張する。 ステアリングホイールを握らせていただいた、ペール・グレーの試乗車は、その手間ひまを実感させるものだった。エンジニアのスペン・キング氏が主導した造形美はそのままだが、細部までしっかりアップデートされている。
トリプルモーターで410ps 航続距離は最長402km
ボディパネルの隙間はピタリと揃い、塗装の艶は深い。黒光りするアルミホイールの奥には、APレーシング社製の巨大なディスクブレーキが輝く。バンパーの中央には、バッテリーEVであることを示す、グリーンの帯のナンバープレートがぶら下がる。 セパレートボディの下側には、オリジナルのラダーフレームとリジットアクスルが残されている。だが、それ以外はほぼすべて新しい。3.9L V8ガソリンエンジンと4速オートマティックは、もちろん降ろされた。 チーフテン EVを動かすのは、3基の駆動用モーター。英国のヤサ社製アキシャルフラックス・タイプで、フロントアクスルを1基が、リアアクスルを2基が受け持つ。 同社によると、システム総合での最高出力は657psに達するそうだが、扱いやすさを考慮し、410psへ制限しているという。前後のトルク割合は、40:60に設定されている。 駆動用バッテリーの容量は、120kWhと巨大。中国のCATL社製ユニットで、ボンネット内と荷室のフロア下に分割され載っている。 主張される航続距離は、354kmから402kmと充分。急速充電能力は90kWまで対応し、最短75分で満充電になる。採用される電動パワートレインはすべて既製品だそうだが、廃車になったテスラからの流用ではないという。