清原はなぜ道を外れたか? 問われる元所属球団の指導責任
メジャーでは、キャンプで新入団選手を対象に、プロとしての社会的モラルを植えつけるミーティングの時間を作っているが、日本のプロ野球では、そこまでの徹底したものはない。巨人の賭博事件を発端に、啓蒙活動が見直されてはいるが、プロ選手として社会的責任、役割、貢献が、いかに重要で、プロとして成功するばかりでなく、人としても尊敬されるような人格を形成することの意義までを時間をかけて、レクチャー、教育していくようなカリキュラムはない。 過去には、故・西本幸雄氏のように、監督自身がその指導の中で人格形成を説き、厳しく教育したり、野村克也氏のように「野球人である前にまず人であれ」と、うるさいほどミーティングで繰り返した監督はいたが、それらはすべて監督任せで球団主導ではなかった。広岡氏は、球界全体でそういう人間形成の組織的なカリキュラムを作っていなかったことにも問題はあると指摘する。 「球団だけでなくコミッショナーにも問題はある。賭博の問題が起きた温床や背景とリンクしているが、第二の清原を出さないための手立てをコミッショナーが考え実行しなければならないだろう。各球団任せという姿勢では駄目だ。こういうことにもっと早く気がつき、手を打っておくべきだったのだ」 12球団の新人を集めたNPBの研修会が毎年、開かれているが、それだけはカリキュラムとしては脆弱だろう。子供たちが、プロ野球界に入ることに不安を抱くような要件は、排除しなければならないし、第二の清原を絶対に出さない手段を今後は、考慮する必要があるだろう。 「もう清原のようなスターは二度と出てきませんよ。悪い子じゃないだけに、可哀相な気もするし、もったいないと心から思う。もうプロ野球の世界に復帰するのは難しいだろう。更生したとしても、野球界での名誉を回復するには、彼がプロ生活を送った22年間と同じくらいの歳月が必要になるのかもしれない」 広岡氏は、重い見通しで、清原逮捕に関する問題提起を締めくくった。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)