ウッドコーン×木目調ボディでワイヤレス高音質リスニング。ビクター「EX-DM10」レビュー
“ウッドコーンスピーカー”。スピーカーの振動板に木を使用することで音の暖かみと自然な響きを生み出す技術の最新形がVictorブランドで登場した「EX-DM10」(実勢価格:4万8900円前後)です。 【スピーカーの詳細画像をすべて見る】 オーディオの仕事をしている僕としては“ウッドコーンスピーカー”とは2000年代前半からの長い付き合い。開発時期によって固有の響きを持つ木材の素材と加工を工夫していて、最新版では振動板はカバ材、センターキャップにはチェリー材を採用しています。 そんな“ウッドコーンスピーカー”の開発物語はひとまず置いておくとして、Victor「EX-DM10」は木目の筐体も美しいコンパクトな一体型オーディオシステム。オーディオ製品としては“コンポ”の系譜に属するけど、CDレスかつワンボディで、Bluetoothによるワイヤレス再生対応なので、イメージするのはスマホからカジュアルに音楽を再生するシーン。 そんな“ウッドコーンスピーカー”搭載で音楽リスニングの音質重視、ちょっと贅沢なワイヤレススピーカーとしてVictor「EX-DM10」を自宅にセットして実機レビューしていきます。
■ウッドコーンから想像する以上のサウンド
実機を前にしてみると、“ウッドコーンスピーカー”だけでないウッドらしさに心惹かれます。デザインは、木目調でフラット&ローデザインのナチュラル志向ですね。 本体サイズは幅335mm×高さ115mm×奥行き191mmで、一体型のワイヤレススピーカーとして考えると幅や奥行きは大きめと思うかもしれませんが、オーディオ製品では音質を追求するために“ウッドコーンスピーカー”背後の筐体の奥行きも必要です。 機能面ではBluetoothのワイヤレスの他にAM/FMチューナー、ハイレゾ音源を含むUSBメモリ再生/録音にも対応するモデルですが、シンプスにスマホから音楽を流すだであれば本体を適当な棚やテーブルに設置してBluetoothに接続すればいいですね。 BluetoothのコーデックはAAC、aptX、aptX HD、aptX LLと高音質コーデックに対応しているので、今回はAndroidスマホをaptX HDで接続しています。 ひとまず、サブスク音楽配信で最新のヒットチャートから聴き始めると…予想を遥かに超えて音質が良いですね、コレ。 例えば、全世界でヒット中のCreepy Nuts『Bling-Bang-Bang-Born』。ヒップホップとラップを取り入れた今どきの楽曲を流してみると、サイズ以上に低音の再生能力が秀逸。特にビートの効かせ具合、引き締まった低音と情報量がオーディオ的です。スピーカーの位置から浮かびあがるようなボーカルの定位に、リリックもキレよく聞き分けて音楽のノリの良さまでカバー。 同じく最新のヒット曲からtuki.『晩餐歌』を聴くと、ハッキリと分かるのがアコギの表現力の良さ。Victor「EX-DM10」の音ってスピーカーの存在が消えて空間に音が浮かんで、そして前後方向にも響きと立体感を感じる再現性ですね。女性ボーカルでは声の滑舌をしっかり再現するようなところ、そこにただクリアではないウッドらしい音の響きや温かみ由来の音色が現れます。 当然のように音質マニア御用達のジャズの楽曲も大得意。Diana Krall『夢のカリフォルニア』もムーディーな音の雰囲気は実力十分。予想外ですが、“ウッドコーンスピーカーの音”というイメージにとらわれ過ぎないストレートな高音質だと思います。大編成のクラシックよりもJ-POPやジャズなどスタジオで収録した音楽全般と相性が良く、小音量でも音を聞き取りやすいサウンドでした。 普段使いする際に便利なのが、電源を落とした際に“Bluetoothスタンバイモード”という状態にできること。この状態では、スマホからBluetoothで接続すると自動的にスタンバイから復帰するのでリモコンレスで操作できます。 他にも外部機器接続や、AM/FMチューナー、USBメモリ再生/録音する使い方もできます。 タイマー機能もあるので目覚まし用途でラジオやUSBメモリの音源を再生したい人にも活用できますね。 Victor「EX-DM10」にマッチする利用シーンって、スマホで音楽を流すぐらいの距離感で自分好みの音楽を聴くというスタイルかも。ゆったりとした音楽リスニングで、ワイヤレススピーカーでは到達できない高音質のサウンドを届けてくれる。そんな現代的な“ウッドコーンスピーカー”って家にあると素敵ですね。
<取材・文/折原一也 撮影協力/JVCケンウッド>