「始発でも間に合わない」慶大野球部密着で人気のYouTube「ANDTV」制作者は元テレ東の敏腕P 奮闘を追いかける理由
YouTube「ANDTV」が制作する、東京六大学野球リーグの慶大を追いかけた番組が野球ファンの間で人気を集めている。「ANDTV」を主宰する、慶大野球部OBで元テレビ東京スポーツ局プロデューサー、現在は合同会社AND代表の山崎満靖さん(40)に、番組に懸ける思いを聞いた。(加藤 弘士) 【写真】慶大内野手時代の山崎満靖さん 慶大野球部ファンの間で、「ANDTV」はよく知られた存在だ。山崎さんはカメラを片手に春季キャンプ地の鹿児島から、午前5時半スタートの日吉・下田グラウンドでの練習まで密着取材を敢行し、YouTubeに続々とアップしていく。 「練習が午前5時半に始動と聞いて、(都内の)家からは始発で行っても間に合わないと。なので自転車で行きました。往復で35キロぐらいあるんですけど。まあ、電動ですけどね(笑)」 昨秋から堀井哲也監督を中心に、慶大野球部を精力的に取材している。すると、チームは昨秋のリーグ戦を制覇。勢いのままに明治神宮大会では日本一に輝いた。Vパレードの裏側に、昨夏の甲子園を制した慶応(神奈川)ナインの大学合流、4番・清原正吾内野手の活躍など、話題に事欠かないことも追い風となり、チャンネル登録者数は増加の一途をたどっている。 「卒業以来、グラウンドに入ったこともなかったんです。成績を誇れるようなOBじゃないですし。神宮には新人戦で1打席立っただけ。それも三飛でしたから」 慶大野球部に密着するきっかけは、堀井監督との“球縁”にあった。 「たまたま同期の中根慎一郎君が現在、助監督を務めていまして。去年の夏、仕事でたまたま旭川に行く機会があったんです。お昼に『孤独のグルメ』にも出てきたお店で豚丼を食べようと行ったところ、その2階に慶大野球部が旭川で合宿を行うというポスターが貼ってありまして。それを写真に撮って、中根君にLINEを送ったんです」 昼時ということで、中根助監督は堀井監督とランチをともにしていた。すぐに返事が来た。「堀井監督が山崎のことを覚えているよ」という内容だった。 「『まさか!』と。17年前のあいさつを覚えてくれているだなんて。直接お話ししたのは5秒ぐらいなのに(笑)。僕が大学4年に進級する直前、日吉で行われた2軍キャンプに、当時JR東日本の監督だった堀井さんが講話に来て下さったことがあったんです。僕が中学時代に野球を教わった元中日コーチの飯田幸夫さんは、堀井さんの打撃の師匠でもあって。僕にとって堀井さんは兄弟子だと(笑)」 講話の後、堀井監督のもとに出向き、「私も飯田さんに習っていました」とあいさつした。それが堀井監督の記憶の片隅に残っていた。指揮官が中根助監督に「あいつは、いいバッターだったんだよなあ」と話したと聞くと、山崎さんの胸が熱くなった。 野球を巡る“縁”を大切にする堀井監督の指導哲学を描いた「エンジョイベースボールの真実」を制作したところ、口コミで徐々に人気が広がっていった。今では神宮球場で選手の家族からも「いつも見てます」と声を掛けられるようになった。堀井監督は「ANDTV」を3度見することもあるという。「振り返りも含めて、何より私自身が配信を楽しみにしております」。その言葉がきょうも、山崎さんの足を現場へ向かわせる。 大学時代のポジションは一塁手。当時の写真では左手に“清原モデル”のファーストミットをはめた姿が確認できる。「野球を始めたキッカケは、清原選手のフルスイングでした」。憧れた清原和博さんの長男・正吾選手が今、4番で活躍しているのも“球縁”かもしれない。 撮影に編集。SNSによるプロモーション。全部一人で行う。なぜそこまで、慶大野球部に情熱を燃やせるのか。 「愛ですよね。ラブというか。慶応を一言で表すと、エキセントリック・ラブな感じがあるじゃないですか」 胸に秘めた愛と、テレビマンとして培ったEYE=確かな眼で、“陸の王者”の青春の日々を記録していく。
報知新聞社