「オールジェンダートイレ」ICUや東大…大学に続々 工夫したのはどこ?
性別を問わず、だれでも利用できる「オールジェンダートイレ」が大学でも続々と設置されています。従来の個室型の「多目的トイレ」や「だれでもトイレ」の名称を変更したものだけでなく、最近は同じ空間の中に個室を複数つくったり、個室内に手洗いスペースを設けたりするものも登場しています。そうしたオールジェンダートイレは、商業施設やオフィスなど公共の場でも増えつつありますが、大学での設置には、どんな工夫があるのでしょうか。 【写真】出口は2つ、男性用にも個室を 「オールジェンダートイレ」工夫した点は?
大学の中でいち早くオールジェンダートイレを採り入れたのが、国際基督教大学(ICU)です。2020年9月に、全学生が利用する本館の1階から3階までの中央部にあったトイレを改修し、オールジェンダートイレにしました。 帰国生や海外からの留学生も多く、多様な学生や教職員が集まるICUでは、世界人権宣言にのっとり、互いに尊重し合い、だれもが過ごしやすいキャンパスの実現を掲げています。これまでにも、健康診断にオールジェンダーの時間を設けてきました。オールジェンダートイレの導入もそうした取り組みの一つです。 それまでは従来型の「だれでもトイレ」がキャンパス内に点在していましたが、授業の合間に行くことが難しいという問題や、「だれでもトイレ」に入ること自体が性自認のカミングアウトにつながってしまうのではないかという懸念があったと言います。 「どんな背景の方にも不利益を与えないというのが、大学としてのメッセージです。改修の際も、すべてのトイレをオールジェンダートイレにするのではなく、学生をはじめとする利用者に選択肢があることが重要だと考え、男女別のトイレも残しています」(広報戦略室の吉良綾乃さん)
出入り口を2つ設置
従来の男女別トイレに慣れている人にとっては、オールジェンダートイレに対して「プライバシーは守られるのか」「性犯罪被害に遭わないか」といった不安があるかもしれません。 ICUでは、オールジェンダートイレを設置するにあたり、どんな懸念があるのかを学生に尋ねる事前アンケートを実施しました。ただし、設置の可否についてはあえて問いませんでした。その理由は、「設置の可否を問いかけてしまうと、マイノリティーの声はいつまでも届かないから」です。 アンケートでは、「音が気になる」「男性と鉢合わせするのが怖い」といった不安の声が多く寄せられました。それらの不安に対して、次のような工夫をしてオールジェンダートイレを設計しました。 1.出入り口を2つ設置し、行き止まりをつくらない回遊型にして、万が一何かあった場合でも逃げやすいように 2.個室の壁は厚くし、ドアを天井いっぱいの高さにして音漏れ・のぞき込みを防止 3.個室にも手洗いを設置し、人と鉢合わせする機会を軽減 4.個室内の凹凸を減らし、カメラなどが設置できないように配慮 5.男性用小便器の個室も設け、ゆるやかに男性用・女性用エリアの動線ができるように工夫 導入から3カ月後と1年後に利用者アンケートを実施したところ、回答者の90%近くが「大変満足」「満足」「普通」と回答し、「普通に使っています」「性的マイノリティーの方がどんな気持ちでトイレを使っているのかがわかりました」など、ポジティブな感想が多かったそうです。 「人によって好き嫌いはあるようですが、多くの方がオールジェンダートイレを設置した本学の理念に共感したうえで、利用しています」と、吉良さんは言います。