「世界のマクドナルド」を育てた男がハンバーガーの前に売っていた「意外な商品」
● 10年使えるミキサーより、毎日売れるハンバーガーを! 店内を見学させてもらったクロックはその手法とシステムにさらに驚愕する。マクドナルド兄弟は独自のシステムを開発することによって、調理手順の無駄をいっさい無くしていたのである。しかも店は清潔でハンバーガーの味は言うに及ばず、低価格を実現している。 「これがビジネスにならないわけがない」 そう直感したクロックはこの店を全国に広めたいと直感した。彼らの店舗が増えれば増えるほどより多くのミキサーを仕入れてもらえると算段したからだ。 マクドナルド兄弟にチェーン展開の予定はないのかと聞くと、ちょうど彼らもフランチャイズ化を考え始めているということだった。だが、全国展開をしてくれる代理人が見つからないという。 そこでクロックは気がつく。「一度売ったミキサーは10年間近く使える。その後の買い替えは当分起きない。だが、ハンバーガーは違う。毎日飛ぶように売れていく!」 ならばと、クロックは即座に自らが兄弟の代理人となってフランチャイズを展開したいと申し出た。先行きが案じられるミキサーの販売よりハンバーガーに将来性を感じたのだ。
実際、彼の推測は当たっていた。のちにマクドナルドをはじめとする外食産業のミキサーは全自動式のものが中心となり、クロックの販売していた旧式のミキサーは使用されなくなるが、ハンバーガーを売るファストフード店は世界を席巻していくのである。 ● 取引先の売り上げを伸ばす方法を提案 クロックは根っからのセールスマンだった。20歳の時にリリー・チューリップ・カップ社で紙コップを売るセールスマンとなる。途中ピアノ奏者をめざしたり不動産業に手を出したりした時期もあったがそれでは生活をしていけず、ここで彼は社内きっての敏腕セールスマンとしての腕を存分に発揮していく。 クロックのセールスの手法はただ取引先に出向いて注文を取るだけではなかった。彼は取引先の売り上げを伸ばす方法を常に研究し、それを先方に提案した。取引先の売り上げが伸びれば伸びるほど紙コップの受注も増えるからだ。これはマクドナルド兄弟の店の店舗数を増やしてミキサーを拡販しようと考えたのと同じである。 たとえば彼は、得意先のチェーン店がランチタイムには満席となり客がさばききれないのを知ると、テイクアウトサービスを始めるように提案する。 最初は乗り気でなかった店側もクロックの粘り強い説得に根負けし、一度試してみる。すると上々の結果が出て全店でサービスを実施することになり、クロックの営業成績も格段に伸びるというわけだ。