戦地向かうウクライナ兵が「結婚」決断のわけ…挙式を支援するプロジェクトも
結婚式支援プロジェクトを始めたきっかけは2022年6月、自宅がある中部チェルカッスイ州で「結婚式の音楽」を聞いたことだったという。 オリフェルさん「日曜日の朝、音楽が聞こえて目を覚ましました。それは結婚式の音楽でした。戦争中にこんな音楽を聴くなんて、とてもびっくりしました。見てみると、兵士の結婚式だったのです」 しかし、このときオリフェルさんが目にした「結婚式」は、音楽とわずかな風船しかない、非常に質素なものだった。直前に自身がウクライナ国外で手がけた華やかな結婚式とはあまりにも違い、大きなショックを受けたという。 オリフェルさん「(見ていて)とても辛いものでした。兵士はいま私たちを守っている最も大切な人々なのに、(きちんとした)結婚式をあげられなかったのです。彼らも人生最高の日を楽しみ、愛し、祝う権利があります」
■SNSで広がった支援の輪
兵士たちに満足できる結婚式をあげてもらいたい。そう考えたオリフェルさんは「英雄に結婚式を」と名付けたプロジェクトを開始し、協力者を募った。それまで国外を拠点に活動していたこともあり、ウクライナで式をあげるのに頼れる知り合いはいなかったが、すぐに協力者が現れたという。 オリフェルさん「ウエディング業界とは縁のない、一般の人々が協力してくれました。無償で協力してくれるカメラマンを探しているとフェイスブックに投稿したところ、ドミノが倒れるように広がり、キーウにいる人から『協力したい』と電話を受けたのです。このようにして2022年の夏、(支援した)最初の結婚式をあげました」 オリフェルさんは2022年6月以降、これまでに30組以上の挙式をサポートしてきたという。
■新婚夫婦が望むウクライナの未来
キーウ中心部の独立広場の一角には、ロシア軍との戦闘などで死亡した軍人たちを悼む無数のウクライナ国旗が立てられている。新婚夫婦のオレクサンドルさんとマリヤさんも、この場所を訪れた。 オレクサンドルさん「この旗を見ていると、亡くなった友人たちを思い出します。私の部隊にも犠牲になった仲間がいて、私の長年の友人も含まれています」 マリヤさん「私は新年を迎える前に母とここを訪れましたが、(旗の数は)もっと少なかったです。でもここに来る度に…。この数は多すぎます」 この先、再び戦地に戻ることになるオレクサンドルさん。次の休暇がいつになるか見通せないなか、「今を生きる」ことを大切にしていると話した。 オレクサンドルさん「マリヤは私が戦争や東部の状況について考えなくてすむように、とても頑張ってくれています。私たちは人生からできるだけのものを得ようとしているのです」 マリヤさん「この(一緒にいられる)期間、私たちはできる限りのことをして、人生を最大限生きようとしています」
オレクサンドルさんも亡くなった戦友のために旗を立てた。この先また、戦地へ戻ることについては──。 オレクサンドルさん「獣たち(露軍)を食い止める。それが戦地に戻る唯一の理由です」「(死の)恐怖は非常に強い。しかし、この義務はそれを上回るのです」 最後に、2人が望む未来について聞いた。 マリヤさん「戦争がなく、夫がそばにいてくれて、子供の成長を見守ってくれる。そういう未来を本当に望んでいます」 オレクサンドルさん「戦争のない、平和な未来を望みます。最も重要なことは、戦争で人々が死ぬこの状況が終わることです。結局のところ、これが最も意味のないことなのですから」