平戸海が「三役三賞」 ひた向きに有言実行<2024長崎スポーツこの1年・2>」
11月の大相撲九州場所で、西前頭筆頭の平戸海(平戸市出身)は4勝11敗と振るわなかった。右肘付近に巻いたテーピングが痛々しい。2日目にテレビ解説を務めていた師匠の境川親方からそれを指摘され、翌日からテーピングを外した後も苦戦が続いた。 4勝11敗の成績は2022年9月の新入幕以来で最悪。本調子ではなかったのか。今月初旬、巡業で長崎市を訪れた本人に直接聞いてみた。 「あの時は腕が痛そうに見え…」 そこまで言ったところで、言葉を遮られた。 「全然、そんなことないです」 結果がすべての土俵の上で、絶対に言い訳はしない。したくない。そんな確固たる意志が伝わってきた。だから強いのだと納得した。 長崎県出身力士として、23年ぶりの新三役となる小結昇進を果たしたのが7月の大相撲名古屋場所だった。東前頭2枚目で臨んだ5月の夏場所で、初日に大関の貴景勝を撃破。さらに4勝6敗の11日目から5連勝して三役の座をつかんだ。この場所では同い年の大の里が、初土俵からの史上最速優勝。24歳の年男たちが話題をさらった。 名古屋場所では4日目に大の里を破るなど10勝を挙げ、自身初の三賞となる技能賞を獲得。昨年の今ごろ、長崎新聞の単独インタビューで新年の目標を「三役三賞」と語っていた郷土力士が、有言実行の活躍で長崎に明るいニュースを届けた。 本来なら関脇昇進に申し分ない好成績だが、昇進枠が空かず西小結に据え置きに。9月の秋場所で負け越して平幕からの再出発となり、九州場所も負け越した。喜びも悔しさも味わった1年。「厳しい世界。気持ちがまだまだ弱かった。声援に応えられるように稽古しなければ」と振り返る言葉に、謙虚で純朴な人柄がにじんだ。 日本人力士の活躍もあり、大相撲人気は再燃している。若年層に支持が広がって、今年は年6場所、90日間すべてでチケットは完売した。全日程で「札止め」となるのは、若貴ブームだった1996年以来で、長崎での巡業も約3700人が来場する盛況。平戸海は178センチ、138キロの体をいっぱいに使ったひた向きな速攻相撲で、老若男女をとりこにしている。