メッシとネイマール バルサの天才2人は共存できる?
途中起用されていた時点のネイマールは、その持ち味を発揮していた。 左太ももの打撲でメッシが欠場した25日のマラガとのリーグ戦。後半18分から途中出場したネイマールは、同34分に得意のドリブル突破から相手のファウルを誘発。自ら蹴った直接FKは惜しくも相手GKの美技に阻まれたが、廣山氏も、ネイマールの「加入効果」が、そういう部分に表れていると指摘する。 「ネイマールの加入は、対戦相手にとっては嫌でしょう。ファウルも増えるし、プレッシャーにもなる。ストレスを与えますよね。マラガ戦でも相手が頑張り始めた時間帯で、ネイマールが入ったことでマラガのリズムが一気に崩されてしまいました。ネイマールを途中から投入する意味は出ていると思います」 となると、今後の注目は、やはりメッシとの融合になる。 廣山氏の考えるポイントは、こうだ。 「見ている限りでは、ネイマールの近くてメッシがプレーしていると、ネイマールは簡単にボールをあずけて動き直すパターンが目立ちました。つまり、ボールを離すタイミングが早かったんです。メッシが近くにいた方がネイマールの良さが生きるのかなとは思いましたね。ネイマールがボールを離すタイミングが、本来バルセロナが持っているチームのリズム、感覚に近かったんです。逆に、メッシがいない時はドリブルが多くなっていました。途中出場でファウルをもらい、リズムを変えるという面ではプラスの効果は出ていましたが、90分間フルでの出場となるとワンパターンになるのではとも思います。メッシとできたことが、イニエスタやシャビといった他の選手ともできればいいと思います」 天才は天才を知る、ということなのだろう。7月末に行われた入団会見の席で、ネイマールはメッシへ抱き続けてきた憧憬の念をはばかることなく公言している。 「世界一のプレーヤーが世界一であり続けるために、その一助になるために来ました」 世界一のプレーヤーとは、言うまでもなくメッシのことである。この思いがある限り、神様クライフが危惧した事態には陥らないだろう。 昨シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝で、バイエルン・ミュンヘンに完膚なきまでに粉砕されたバルセロナは、ひとつの時代が終わったと指摘された。チーム内におけるメッシへの依存度が極限まで高まり、相手チームは「メッシさえ潰せば」とファウル覚悟の手荒い対策に打って出てくる。 そうした荒波を乗り越えるには、メッシと同じような輝きを放つ「巨星」を、同時にピッチに立たせるしかない。相手に与える脅威を倍にするしかない。だからこそ、宿敵レアル・マドリーとの争奪戦の末に、ネイマールを5年契約でサントスから迎え入れたのだ。 バルセロナにおいてネイマールが確固たる居場所を築き、覚醒を果たすためには、この先、課題の守備を磨く必要もあるだろう。廣山氏も「守備に関しては、ペドロやサンチェスと比べるとまだまだです。この先、スタメンでどんどん出場していくためにはバルセロナの守備を覚える必要があるでしょうね」という。 バルセロナが得意とする、ボールを失った直後に相手のボール保持者を集団で囲い込み、奪い返す守備をネイマールほどの才能の持ち主なら、ほどなくして新たな役割をマスターしてしまうだろう。 21歳のネイマールが新天地に順応し、サントスやブラジル代表で何度も見せた自由な発想が26歳のメッシの創造力とシンクロすれば。 2013年8月28日は世界を震撼させる「伝説」のプロローグとして、ファンの脳裏に刻まれるはずだ。 (構成・藤江直人/取材協力・吉野正人)