グレートソルト湖の資源激減もトランプ氏の温暖化懐疑論容認 ユタ州
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【10月12日 AFP】米西部ユタ州で生まれ育った共和党員のジョエル・フェリー(Joel Ferry)氏は、グレートソルト湖(Great Salt Lake)の湖畔で牧場を経営しながら、気候変動を目の当たりにしてきた。湖の水面積は、この40年間で3分の2に縮小した。 州の天然資源局の局長でもあるフェリー氏は、グレートソルト湖の枯渇は、湖畔の住民200万人のみならず、州都ソルトレークシティー(Salt Lake City)の存続を脅かす「環境的な核爆弾」であるということを承知している。 それでも、11月の大統領選では、温暖化に懐疑的な見解を公言してきた共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領に迷わず投票するつもりだと言う。 フェリー氏は、トランプ氏の「経済政策の成果」を称賛。また「非常に強い影響力を振るって家族の価値観に関する問題」に取り組んできたトランプ氏に、モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会〈Church of Jesus Christ of Latter-day Saints〉の通称)の信徒として感謝していると話した。この中には、最高裁判事に保守派を指名し、人工妊娠中絶の権利を認めた従来の判断を覆したことも含まれている。 フェリー氏にとっては、気候変動による危機が迫っているという主張をトランプ氏がたびたび嘲笑している事実よりも、トランプ氏の「成果」の方が重要なのだ。 モルモン教の信徒が人口の半分を占めるユタ州では、こうした反応は一般的だ。多くはトランプ氏の人格に懸念を抱いているが、それでも共和党への支持は根強い。同州では1964年以降、大統領選で民主党候補が勝利したことはない。 2022年には、グレートソルト湖の水位が観測史上最低にまで下がった。農業と鉱業による水の過剰消費と、過去に例のない20年に及ぶ干ばつが影響を及ぼした。 湖の塩分が濃縮され、地元経済の主な収入源であるブラインシュリンプ(アルテミア)が激減し、昆虫もいなくなったた。その結果、昆虫を餌とする渡り鳥も姿を消した。 ■「気候変動という宗教」 ユタ州にあるウェストミンスター大学(Westminster University)のグレートソルト湖研究所(Great Salt Lake Institute)の副所長を務めるデービッド・パロット(David Parrott)氏は、「湖が消失すれば、水が干上がった『マッドマックス(Mad Max)』の世界のように、私たちは地元の町を捨てて出て行かなければならない」として、ディストピアを描いたハリウッド映画シリーズを引き合いに出した。 湖底に堆積しているヒ素や有毒な重金属が空気にさらされ、砂嵐が起きると、大気が汚染される可能性があるからだ。 フェリー氏は、こうした危機的状況に対し、地元の共和党員は一丸となって取り組んだと言う。 水の消費量削減を目指すための農家への奨励金、かんがい技術の向上や人工降雨技術の研究、さらには塩分濃度を抑制するために湖を二つに分割する方策など、過去3年で「10億ドル(約1480億円)以上」が投じられてきたと主張する。 そして、全国的にも「環境問題は共和党にとっても重要な優先課題であるべきだ」との見方を示した。 だが、ジョー・バイデン(Joe Biden)政権が目指してきた政策を逆戻りさせることも含むトランプ氏の環境政策は「最優先課題」からは程遠い。 トランプ氏は、大統領選で勝利した場合、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」から再び離脱する考えを表明。石油資源についても「ドリル、ベイビー、ドリル!(掘って掘って掘りまくれ)」という主張をたびたび繰り返してきた。 パロット氏は、「トランプが大統領になれば、環境自体にとっても、グレートソルト湖にとっても悲惨な結果になるだろう」と警鐘を鳴らす。 州都ソルトレークシティーでAFPの取材に応じた保守派の有権者の大半は、湖が干上がっていく危険性について懸念を表明した。 その一方で、「地元の問題」についてワシントンの議員から「指図される」のは我慢ならないと主張する人も少なくない。ビル・クレメンツさん(75)もその一人だ。 湖の水位低下については、「こうした問題の多くは自然現象だと思う。(湖の水位は)上がったり下がったりするものだ」と話し、「気候変動という宗教には、私はまだ入信していない」と続けた。 映像は9月に撮影。(c)AFPBB News