奈良のシカ「虐待認められず」奈良市が調査結果を公表 獣医師が“虐待”と通報 一方で「衰弱のシカみられエサやり不十分の可能性」鹿愛護会に行政指導
シカの保護施設の獣医師が施設内のシカが十分なエサを与えられないなどと市に通報していた問題で、市は調査の結果、「虐待は認められなかった」との調査結果を発表しました。 【画像を見る】保護施設でのシカの様子は?立ち入り調査の様子は? シカの保護施設「鹿苑」を管理する「奈良の鹿愛護会」が『十分なエサを与えず、7割以上を飢餓状態にさせ、さらに年間50頭以上の雄鹿を死なせるなどの虐待が行われている』などシカを虐待しているとして、会所属の獣医師が9月に奈良市に通報していました。 奈良市は通報を受けて保健所職員の立ち入り調査や専門家らによる現地調査を行ってきました。
仲川市長「虐待ではないが動物福祉的に問題があった」
その結果、悪意性や故意性はないとして、動物愛護管理法で規定されている虐待を受けるおそれのある事態には該当しないと判断し、虐待は認められないとしました。また刑事告発は行わない方針だということです。 一方で、奈良市保健所の調査の結果、次のことがわかったということです。 ▼栄養不良の個体がみられ、動物へのエサやりおよび給水が行われているが不十分な可能性がある ▼管理日報だけではエサの質・量の適正性が読み取れない ▼衰弱により死んだシカの数が多い ▼健康及び安全を保持するための隔離スペースがない ▼飼養密度の適性を欠いた状態など この結果、奈良市保健所は改善に資する鹿愛護会に対して行政指導を行い、保健所として今後監視に努めていくということです。 調査結果の公表を受けて、24日に会見を開いた奈良市の仲川市長は「虐待ではないが、動物福祉的に問題があったというのが今回の結論です。通報を頂いたことで議論し直し、問題提起にもなりました。行政指導をして終わりではなく、指導に基づいて今後とも具体的な行動をとっていきたい」
奈良市の愛護会への指導内容
奈良市は主に次の4点について愛護会に対して指導を行ったということです。 ①「新鮮で清潔な水を常時与えること」「施設内の排せつ物の清掃を毎日行い、飼育環境を衛生的に保つこと」「動物の排せつ物と食餌が混在した状態にしない」こうした状況に改善すること ②現状で衰弱しているシカの有無を把握すること ③今後、衰弱させないため、収容後間もないシカや衰弱せないための方針や計画を講じ、シカの種や反芻動物としての特性などを考慮すること ④雨や雪など厳しい天候から身を守る場所を確保し鹿の収容対策などについて関係機関と協議し改善に努めること