虎に翼のなかで「壁のような存在」、松山ケンイチが語る桂場等一郎「終盤、彼なりの闘いを見せます」
連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合ほか)が放送を残すところ1週間となった。第1週で寅子(伊藤沙莉)が法曹を志すきっかけを与え、物語の最初から最後まで「法とは何か」を体現し続けた桂場等一郎を演じた松山ケンイチに、役への思いを訊いた。 【写真】第2回より。若き日の桂場と寅子 ■ 最高裁長官という立場から、変わりゆく価値観とどう対峙するのか 桂場が『虎に翼』においてどんな役割を担っていたのか。松山は、「一口に法曹界といっても、いろんな人がいるんですが、そのなかでも桂場はかなり尖った人物ですよね。最後まで『司法の独立』にこだわり抜いて、覚悟を貫いた人。自分が頼れる人や同志みたいな人が極めて少ない人だと思います」とコメント。 「第24週で桂場は最高裁判所長官になりましたが、自らの理想を完遂させるためには、いろんな物事や、人まで切り捨てなければいけないこともある。桂場は法曹界の人たちにとって、壁みたいな存在でもあるのだと思います」と、自らの役柄を分析した。 また、主人公・寅子と桂場の関係性について、「桂場は寅子に対して『それは理想論だ』『時期尚早だ』と繰りかえし言っていますが、実は、いちばん『理想』にこだわっているのは桂場だったりするんですよね」と振りかえる。 「法律の問題ってひとつのトピックだけじゃない。六法全書という、めちゃくちゃ分厚い本があって、その中にはありとあらゆる権利とルールについて書かれている。そのルールも、時代のなかでどんどん古くなっていく。変わりゆく考え方や価値観を、どう現代の解釈とすり合わせていくのか、寅子は家庭裁判所の裁判官という立場から、桂場は最高裁長官という立場から取り組んでいきます」。 ■ 寅子にとって桂場は「煽りながらも背中を押してきた人」 さらに続けて、「寅子と桂場は、変えようとしていることの広さだったり、トピックの種類みたいなものが違うんですよね。最高裁長官といってもひとりの人間ですので、桂場としては裁ききれない部分があったり、切り捨てなければならない課題が必ず出てくる。元来桂場はとても公平性のある人間だとは思うんですけれど、最後の最後にその公平性すらも捨てて『司法の独立』に舵を切る瞬間がある。 寅子にとって桂場は、常に『煽りながらも背中を押してきた人』でしたが、最終的には『この人を倒さないと、自分の理想や求める解決の方向性が潰されてしまう』という存在になっていきます。こうした理想と理想のぶつかり合いが見どころだと思います」とコメント。 物語最終盤における桂場の見どころについて訊くと、「『司法の独立』に身を賭して、そのために生きてきた桂場が、終盤では大きく葛藤し、『彼なりの闘い』を見せます。ぜひ最後まで楽しみにご覧ください」と語った。 『虎に翼』本編最終回は9月27日(「1週間のまとめ放送」は9月28日)に放送される。 取材・文/佐野華英