キャッチコピーが印象的だった1990年代の日本車3選
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“大型”や“高級”への憧れ
コマーシャルを通して、印象的なキャッチコピー(宣伝文句)を残したクルマはいくつもある。 私の記憶のなかにある、もっとも古いものは、「隣のクルマが小さく見えます」という、1970年に日産が「サニー1200」を発表したときのもの、だ。有名なコピーなので知っている人も多いだろう。競合だったトヨタ「カローラ」と、100ccぐらいのエンジン排気量の差や、10mm程度のボディ幅の差を競っていた時代だった。背景には、「大きいことはいいことだ」という森永製菓のエールチョコレートのキャッチコピー(68年)に共感した私たちの、“大型”や“高級”への憧れがあったのは、自分の体験としてよく覚えている。 そのあとは、83年の7代目のトヨタ「クラウン」の「いつかはクラウン」が、登場し、同年発売の6代目の日産「セドリック」の「素晴らしき人生、そしてセドリック」なんてあるが、そのときの自分の人生とまったく無縁だったので、あとで「いつかはクラウン」がすごいコピーと聞いて、「そんなものかぁ」と、思ったのも事実だった。
(1)トヨタ「カムリ」(4代目):「ゆーゆー」
90年に発売された4代目カムリ(車名がセリカ・カムリからカムリとなり、同時に前輪駆動化したときを初代とするなら3代目)は、それまでのクラウン的なスタイリングコンセプトから一転、「セルシオ」を思わせるデザインに変わったのが印象的だった。 2600mmのホイールベースをはじめ、シャシーは先代のものを継続使用したが、プレスドアと、品よく張りだしたショルダーラインと、ボディ側面下部の塗り分けなど、100万円台がメインの価格帯でありながら、プレミアム感が演出されていたのだ。 4代目カムリは、おとなの男性が当時のメインターゲットだったという。当時のカタログを開くと、「ゆーゆー」という変わった宣伝コピーとともに「それは、父のダンディズム」という言葉が並立している。 「目立つことは嫌いじゃないが、目立ちすぎるのは良しとしない(中略)高級車なのにさりげないところが、カムリです」。 揚げ足をとるつもりはないけれど、このときカムリの最上級グレード「プロミネント」でせいぜい250万円。90年って、そんな価格感覚だったんだなぁ、と、遠い目になる。 上記文章の最後に登場するのが「ゆーゆー歩く。ゆーゆー呼吸する。父は、彼らしいクルマを選びました」。 “ゆーゆー”というのは、どうやら「悠々自適」とかの「悠々」らしい。正しい文章では”悠々と”と、なるはずなので、そこはあえて外したのだろうと思う。フシギなのは、父はカムリを選ぶだろう、という視点。いったい、話者は誰なのか。永遠の謎である。