住友不動産六本木グランドタワーの共有スペースに設置された「ルートC」＝東京都港区

ひきたての本格派を指定した時間に受け取ることができる、カップ式コーヒー自動販売機がオフィスビルでじわりと浸透している。開発したのは、ロボット系スタートアップ（新興企業）のニューイノベーションズ（東京都江東区）。自販機には商品ボタンやコイン投入口はない。注文、決済、時間指定をスマートフォン上のアプリで行うのが特徴だ。コーヒーを予約できる便利さで多忙なビジネスパーソンに人気を博している。 【写真】コーヒーは施錠されたボックスに置かれ注文者のみがスマホで解錠できる ■バリスタ厳選、高品質 ニューイノベーションズが製造したカップ式コーヒー自販機は「ルートC」。令和3年に日本有数のビジネス街、東京・丸の内のオフィスビルで登場した。現在のコーヒー1杯の価格は期間限定品を除く定番商品が500円（5種類）。希少なコーヒー豆を使ったプレミアム商品は1980円（1種類）。休憩室などにある通常のカップ式自販機に比べると高めだが、自社内のコーヒー職人、バリスタが厳選した高品質な「スペシャルティコーヒー」をそろえる。商品は3カ月をめどに季節や仕入れ状況に応じて見直す。 飲食店向け調理ロボットの開発などを目指す創業者の中尾渓人代表取締役CEO（最高経営責任者）が「店舗に行くことなく、並ぶこともなく高品質なコーヒーを手にできる環境があったら、オフィスで喜ばれる」と考えたのが開発のきっかけだ。 ■グッドデザイン賞を受賞 ルートCの大きさは高さ204センチ、幅277センチ、奥行き109センチと大型だが、周囲の景観を損なわないようデザインをモノトーン基調で統一した。コーヒーは施錠されたボックスに置かれ、注文者のみがスマホで解錠できるため、他の人がカップに触れる心配もない。受け取るだけのシンプルさなどが評価され、3年に「グッドデザイン賞」を受賞した。 豆ひきやコーヒー抽出機能などが搭載されたルートC内部には、センサーが張りめぐらされている。指定時間の約1分半前に豆をひき、コーヒーがカップに注がれるとボックスの裏が開いて出てくる仕組み。指定時間から10分たっても受け取りに来ない場合、自動的に破棄される。一連の制御機能も自社で開発した。 人工知能（AI）も取り入れており、設置場所ごとに注文パターンを分析し、需要予測ができるため、原料の効率的な配分も可能だ。リピーターを増やすことを狙ったコーヒー診断サービスでは利用者が簡単な質問に答えると最適なコーヒーをAIが提案する。