湘北を支えた第6の男…『スラムダンク』名セリフで振り返る「木暮公延」の情熱とチーム愛
■「泣かすなよ…問題児のクセに…」ギリギリの攻防を繰り広げた陵南戦!
名試合の一つ、インターハイ進出をかけた陵南戦。仙道彰、魚住純という名プレイヤーを有する陵南高校は湘北にとってかなりの強敵である。 桜木は試合目前に、赤木指導のもとシュート練習に励んでいた。その様子を見た木暮も練習に参加。「オレは3年だから…これが最後だからな もしIHに行けなかったら…あさっての陵南戦が最後だ」と言い、「あと三日で引退だ 悔いは残したくない」と試合にかける想いを語り、桜木の心を揺さぶった。 当日、陵南相手に湘北は一進一退の攻防を繰り広げた。だが、大事な場面で3ポイントシューターの三井がスタミナ切れでコートを去ってしまう。ここで代わりに入ったのが木暮。だが陵南の名将・田岡監督は彼を過小評価し、完全に視野に入れていなかった。 ヒリヒリした勝負を展開し、湘北の1点リードで迎えたラスト1分。田岡監督が「湘北の不安要素」と見ていた桜木がパスカットに成功し、ノーマークの木暮にボールを回す。 赤木の「木暮フリーだ うてっ!!」の言葉で、木暮は渾身の3ポイントを打つ。最高のシチュエーションの中放たれたボールは美しい弧を描き、ゴールネットを揺らす。木暮のこれまでの努力が、最高の形で実を結んだ瞬間だった。 そして、この得点が決め手となり70-66で湘北が勝利を飾る。試合後、桜木は木暮に「メガネ君 引退がのびたな この天才のおかげで!」と粋な言葉をかけ、それを聞いた木暮は感極まりながら「泣かすなよ…問題児のクセに…」という名言を残した。 田岡監督の「あいつも3年間がんばってきた男なんだ 侮ってはいけなかった」という木暮への称賛、中学の頃から木暮を見てきた赤木晴子が流す静かな涙、木暮ら3年生の想いを知り全身全霊で挑んだ桜木と最後まで諦めなかった両チームのメンバー。すべてが感動を呼ぶ素晴らしい名場面だ。
■山王戦目前に皆の気持ちを引き締めた木暮の一言
陵南との激闘を終えて念願のインターハイ出場を果たした湘北は、初戦の相手・豊玉高校との戦いにも勝利し二回戦進出を決める。次なる相手は、河田雅史、沢北栄治ら最強選手を有し、高校バスケの絶対的王者として君臨する山王工業高校。インターハイ3連覇中という、湘北からすると強すぎる相手だ。 試合前、湘北はリサーチのために山王高校のビデオを見て、強豪である海南大附属高校を圧倒的な力の差でねじ伏せる姿にあぜんとしてしまう。安西監督が言った、全国制覇に必要な「断固たる決意」を頭に置いても、桜木以外の皆は不安が拭えない。 赤木、三井、木暮の3年生は旅館の外に集まって話すが、三井から「勝つのか? 想像では」と聞かれた赤木は返事に詰まってしまう。そんな空気を一変したのが、木暮の「こうなったら信じようぜ 勝てるさ絶対 入部したときを思い出してみろよ」という明るい一言だった。 そして彼は、続けて「今まで残ったのはあの時本気で全国制覇を信じた奴だけだぜ」という名言を発する。全国制覇への熱が強すぎるがためチームメンバーから「重い」と疎まれ、一人また一人と仲間を失っていったかつての赤木。 残ったメンバーは、赤木と三井と木暮の3人だけだ。赤木を一番近くで見守り、全国制覇という目標に向かって一緒に歩んできた木暮から出たこの言葉は、とても力強く温かいものだった。いかなる時も全国制覇への情熱を絶やさずに練習を続けてきた芯の強さと、仲間への信頼の厚さが垣間見える名シーンだ。 スタメンメンバーに比べ、木暮は試合で光を浴びる場面が圧倒的に少ない。派手さもなく、地味なキャラでもある。だが、彼のバスケへの情熱、チームを想う心は誰よりも強い。木暮がいなければ、湘北はここまで一致団結できていなかったであろう。
さえきしの