ランカーにTKO勝利した村田は世界へ近づいたのか
テレビの煽り的には「いよいよ金メダリストが世界へ」となるのだろうが……世界へ踏み切る準備は万全なのだろうか。 チャンピオンメーカーで世界のボクシングに精通している本田会長は、「プレッシャー」「ガード」「ジャブ」「右ストレート」の4つは、すでに世界で通用すると語っている。事実として、この短期間に大きな進歩を遂げている。村田の個性ともいえるスタイルは確立された。足を使う出入りのボクシングを今さら会得する必要はないだろうが、ガード以外のディフェンス技術はどうだろう。コンビネーションももっと磨けやしないか。高いレベルのカウンター技術は必要ないのか。攻守の切り替えと、そのマネジメント力は足りているのか。「普通では考えられないようなスピードで世界への階段を上っているんだから」とも、本田会長は語っていた。プロ転向の遅かった村田の年齢的なことや、テレビ局の打算なども重なって、村田のポテンシャルを信じて見切り発進をしなければならない事情もあるのだろう。 帰り道。京急の梅屋敷駅で、偶然、歌人でボクシングへの造詣が深くセコンド経験まである福島泰樹さんに久しぶりに会った。 ――村田をどう見ましたか。 「彼の限界を見た。今のままで世界は厳しいな。スピードはないしジャブで顎が上がる。今日も相手が相手なら負けていただろう。アマチュアとプロでは、ボクシングは違うし、ロンドン五輪の金メダルの村田から停滞したままのように思える」 反論の言葉はすぐに出てこなかった。福島さんの意見に同調するようなボクシング関係者も少なくない。だが、一瞬にして試合を終わらせる潜在能力を村田は見せてくれたではないか。まだ進化するための時間は残っている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)