広島市のごみ戸別収集、年間1000件ペースで増加の理由は? 原則はステーション方式だが…
家庭ごみ、みなさんはどうやって出していますか―。広島市ではごみステーションに出す方式が原則とされるが、要望があれば玄関先でも出せる「戸別収集」に無料で応じている。市は「効率やコストを考えると、あくまで最終手段」と消極的。その戸別収集の件数が、年間千件ペースで増えているというのだ。 【写真】 町内会の未加入世帯はごみステーションを使えないことを知らせる手紙
■町内会脱退で手紙「ごみステーション利用は加入世帯が対象」
戸別収集を市に依頼した女性宅を訪ねた。10年前に、近所とのトラブルで町内会を脱退。すると今夏になって「ごみステーションは町内会の加入世帯が利用できるものです」との手紙が郵便受けに入っていた。 ステーション清掃などの日常的な管理を担うのは町内会。それに参加せずにごみを出すのは「やめ得になっている」との不満が、住民から噴出したという。女性は収集業者を通して市に戸別収集を依頼。「収集してくれる人の仕事を増やして申し訳ない」と声を落とす。 広島市でごみ収集を担う業務第一課に見解を尋ねた。担当者は「効率化の観点から、ステーション方式が原則」と強調。事情を聴き取った上で、地域との話し合いを促しても解決できない「やむを得ない場合」に、戸別収集に応じている。 しかし、高齢化や町内会の脱退で戸別収集を依頼する市民は増えている。2023年度の戸別収集件数は3万2330カ所。市が家庭ごみを収集する約7万カ所の半数近くを占め、19年度の2万8227カ所から毎年千件ずつ増えている。「やむを得ない」ケースが多いように思う。
■ごみ所有者が明確に 一方でコストは…
県内の他の22市町はどうだろう。自力でごみを出せない要介護認定者や障害者への対応を除き、戸別収集をしている市町はゼロだった。呉市や三次市は「みんなが戸別を求めるときりがない」「町内会に加入するメリットもなくなる」。戸別収集には懐疑的だ。 全国的に見ると、あえて戸別収集に踏み切る自治体も増えている。例えば神奈川県鎌倉市。25年度から2年かけて、全市域で戸別収集に切り替える。高齢者や子育て世帯のごみ出し労力や、ステーションを地元が管理する手間が省ける。ごみの所有者も明確になって分別意識も高まる。最終的にごみの減量につなげるのが狙いという。 一方でコスト増は避けられない。鎌倉市の試算では、ステーション方式にかかるコストは年間約2億3千万円。戸別収集の場合は5億5千万円にはね上がる。既にごみ袋の有料化にも踏み切った。担当者は「無理ない収集ルートや適正な車両台数を検討し、経費抑制につなげる」と説明する。 地域が共有するごみステーションを維持するには、住民同士の協力が欠かせない。しかし、その利用をめぐって住民同士の分断を招くとしたら、本末転倒だ。広島市の担当者は強調する。「ごみ収集は地域の課題。住民が主体的に解決策を考えられるよう、支援策を検討していく」
中国新聞社