ホンダがフォーミュラEに参戦する可能性はあるのか? HRC渡辺社長「今は2026年からのF1再参戦が最優先……しかしGEN4は魅力的」
先日、東京ビッグサイト周辺で行なわれたフォーミュラE東京ePrix。その観客席に、ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長の姿があった。HRCやチームのウエアではなく、この日は革ジャンにサングラスという出で立ちだった。 【ギャラリー】日産のガレージへご案内。フォーミュラE東京E-Prixを戦う前線基地 実際に観客席から見たフォーミュラEのレースは、渡辺社長の目にはどう映ったのか? そしてホンダがフォーミュラEに挑む可能性はあるのか? F1日本GPの現場で話を訊いた。 「レースとしては、非常に面白いなと思いました」 渡辺社長はフォーミュラEについてそう語った。 「あの日は、HRCのメンバー何人かで観に行ったんですけど、レースとしては面白かったです」 「東京の公道でできたということは、日本のレース業界のひとりとしては嬉しいですよね。色々な楽しみ方、日本の皆さんに身近に観られるような機会を提供できたのは、素晴らしいことだと思います」 「モーターショー(現ジャパン・モビリティショー)をやる会場でしたし、F1とは違ってチームウェアを着ている人も少なかった。普段我々が接している方々とは、違う方々……新しいお客様が増えたという印象でしたね」 公道を使った本格的なレースとしては、日本で初めての事例となった今回の東京ePrix。今後、日本で公道レースが行なわれていくと思うかと尋ねると、渡辺社長は「そうあるべきだと思います」と答えた。 気になるのは、ホンダとしてフォーミュラEに参戦する可能性があるのかということだ。日本メーカーという括りで言えば、現在は日産が参戦中であり、ヤマハもローラとタッグを組んで、来季からフォーミュラEに参戦することを発表した。ホンダもこれまで何度か、関係者がフォーミュラEのパドックを訪れているのが目撃されている。 フォーミュラE参戦の可能性について、渡辺社長は次のように説明した。 「本田技研としては、四輪車を全て電動化する方向性を打ち出しています。その中で言えば、(フォーミュラEに対する)技術的な興味もないことはないなというところです」 「ただ2026年からのF1参戦が控えています。これは我々にとっては重要なので、そこに集中しています」 「それまでにフォーミュラEに出るということはありえません」 しかし電動レースについての理解を進める必要があると、渡辺社長は語る。 「今すぐどうこうということはありませんが、フォーミュラEどうこうというよりも、電動や水素を使ったようなレースフォーマットについては、将来的な意味で意味で言えば当然検討すべき、まずは勉強すべきであると思います」 「我々はエンジンが大好きです。特にレースにおいてはエンジンは魅力的です。だからこそF1というハイブリッドのレギュレーションを非常に魅力的に思い、2026年からの再参戦を決めたわけです」 「そこがベースではありますが、技術開発という観点、レースを使って技術開発をしていくという観点で言えば、電動や水素も当然勉強すべき。否定するモノではないです」 フォーミュラEは2026-2027年シーズンから、GEN4と呼ばれる次世代マシンを導入する予定で、現在はその詳細が詰められているところだ。このGEN4については、技術的にも魅力的なものになる可能性があると、渡辺社長は語る。 「GEN4になると、学べることが多いと思います。電気関係を担当する我々のエンジニアも、なかなか面白い技術競争になりそうだと言っています」 前述の通りホンダはこれまでにも、フォーミュラEを注視していることを認めてきた。しかしその中で、バッテリー開発が自由化されるかどうかが重要だということも指摘されてきた。 そしてGEN4でもバッテリー開発は自由化されない予定だ。更に次のGEN5マシンに向けては、バッテリーを自由化することも検討されると、フォーミュラEのジェフ・ドッズCEOは認めている。 バッテリーが自由化されるかどうかは、今もホンダとしてフォーミュラEに挑む基準となっているのか? そう尋ねると、渡辺社長は次のように説明した。 「具体的な基準はありません。でも、ある程度技術的なチャレンジができないと……共通部品があまりにも多いと、やらないかなというところです」 「今のフォーミュラEは、F1に比べると技術的なチャレンジの自由度が少ないです。もちろん、それによって参戦コストが安くなっていますが、GEN4になると魅力的になると思います」 「ただ、バッテリーの開発が自由化されると、コストも含めて大戦争になります。そうすると、F1との差がどうなってしまうのかなとも思いますが」
田中 健一
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