消火器を家に置くならどれを選ぶ?「天ぷら油火災」「ストーブ火災」で“使い分け”も…万一に備えた設置場所
選ぶポイントは“第一着火物”
大久保さんによると、普通火災では、強化液も粉末も同等の消火性能が期待できる。 天ぷら油火災では、粉末でも炎を抑えることはできるが、油自体が熱を持つので再燃する可能性があるという。そのため内部まで浸透し、消火・冷却する強化液の方が効果的なのだそう。 一方、ストーブ火災では粉末の方が適しているという。理由は、ストーブから灯油が広範囲に漏れてしまった場合、広い範囲を素早く消火する必要があるためだ。 ただし、天ぷら油でなくとも、燃えた物によっては再燃する可能性はゼロとは言い切れない。木材でも内部まで燃えたら、消火した後に再燃することも考えられる。 大久保さんは薬剤選びに迷うなら、最初に着火する“第一着火物”がポイントともいう。 「『どういう物で、火災になりそうか?』を考えて、『粉末がいいのか?強化液がいいのか?』を個人が選択していただければ」 その上で「場所ごとに複数の消火器を備えた方がより良いかと思いますね」とのことだ。 では、適切な消火につなげたいなら、住宅のどのような場所に設置すればいいのか? まず置いておきたいのは「キッチン」だ。 「ガスコンロの近くで火災が起きる可能性が高いので、火元からちょっと離れたところに置いておくのがポイントと思います」 そして、もう1つの場所が「玄関」だという。 火災があった際は冷静でいることが難しく、「消火器はどこ?」と慌ててしまうことが考えられる。すると、消火活動を始める時間が遅くなり、火災の拡大につながってしまうからだ。 「一番重要なのは、いち早く消すこと。なので『どこにあったかな』と悩む時間がない、どこに置いてあるのかが分かりやすいという意味で、普段から何気なく目に入る玄関に置いておくのがいいのかなと思います」 なお、余裕があれば寝室や居間などにも置いておくと、より安心とのことだ。 反対に、置くのを避けたい場所もある。 ガスコンロなどの「火元の近く」はもちろんのこと、押し入れの中などの「取り出しにくい場所」はNGだ。 また、「高いところ」も注意。落下して容器にへこみや変形ができてしまう可能性がある。そして、浴室などの「湿気の多い場所」もサビなどが発生するので避けてほしい。 自宅に置くとなると、保管上での留意点も気になるところ。住宅用消火器の使用期限は、本体のラベルに記載されており、製造年から約5年となっている。 「『5年経ったら絶対使えなくなるのか?』と言われると、そんなことはありません」。宮崎さんはそう言いながらも、例えば、容器の内面塗装が腐食して剥がれ、ノズルを詰まらせてしまったりする可能性がゼロとは言い切れない、とも指摘する。 また、住宅用消火器の容器は金属製のためサビて腐食すると、薬剤を放射するのに必要な圧力が抜ける、液体や粉末など内部の薬剤が漏れ出すことにつながるという。 そのため、使用期限が切れていないかだけでなく、本体の容器にサビ、へこみや変形がないか、外面もよく確認をしてほしい。 他にも、消火器が誤って放射することを防ぐ「安全栓」が外れていないか。また、放射に必要な圧力がきちんと入っているのか、消火器のレバー付近にある「指示圧力計」をチェックする必要がある。 使用期限内であっても半年に1回は異常がないかの点検をすると安心だ。