インボイス制度で「電気料金」が上がる? 関係ないと思っていたのになぜ?「値上げのカラクリ」を解説
インボイス制度で影響を受けるのは個人事業主などで、会社員には関係ないと思っている人も多いかもしれません。 しかし、インボイスの影響で電気料金が値上がりすることをご存じでしょうか。なぜインボイス制度で電気料金が値上がりするのか、本記事では値上げの理由を解説します。
インボイス制度で電気料金が値上がりする
2023年10月からスタートしたインボイス制度は、「適格請求書(インボイス)」を使わなければ消費税の仕入税額控除ができなくなる制度です。これにより、今まで免税事業者だった個人事業主などに大きな影響が出ています。 そうした中で、インボイス制度により電気会社の消費税の負担額が増えたため、来春から消費者の負担額が1キロワットアワー当たり0.007円程度、値上がりします。 1キロワットアワー当たり0.007円の値上げは、1ヶ月当たりの電気料金にどの程度影響するのでしょうか。環境省の調査によると、1世帯当たりの年間電気消費量の全国平均は4258キロワットアワーです。1ヶ月当たりにすると約355キロワットアワーのため、約2.5円の値上がりとなります。 こうして見るとたいした金額ではないかもしれませんが、私たちの知らないうちにいつの間にか値上がりが決まっていることは問題なのではないでしょうか。
インボイス制度と電気料金にどういう関係がある?
なぜ、インボイス制度によって電気会社の負担が増えるのでしょうか。そこには「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」という制度が関係しています。 最近では、一戸建てで太陽光発電を行っている世帯も増えてきましたが、電気会社はFITによって、一般家庭などにおいて太陽光発電で発電された余剰電力を一定価格で買い取らなければなりません。 電力を購入する際に電力会社は消費税を支払っています。従来であれば消費税を納税する課税事業者は、自分が納めなければならない消費税からこうした仕入れなどで支払った消費税を差し引くことができました。これは仕入税額控除という仕組みです。 しかしインボイス制度によって、仕入れ先も課税事業者でなければ仕入税額控除ができなくなりました。一般家庭の多くは課税事業者ではなく免税事業者のため、余剰電力の買い取りで支払った消費税を差し引けなくなったのです。 FITによる買い取りは義務のため、相手が免税事業者だとしても買い取らざるを得ず、電気会社に新たな負担が生じます。その負担額が2023年度分(2023年10月~2024年3月)で約58億円になるため、その分を値上げでまかなうことになったのです。 これについては、「一般の課税事業者はこのような負担の転嫁ができないのに、なぜ電気会社だけ?」という声がある一方で、「電気会社は買い取りが義務のため仕方がない」という意見もあるようです。