高橋ヨシキが映画『ツイスターズ』と『コンセント/同意』をレビュー!
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 「竜巻」をぶっ壊せ!超大作アクション・アドベンチャー!&"同意の上での肉体関係"の裏側にあった恐ろしい事実を描く! * * * 【写真】『コンセント/同意』のレビューにも注目! 『ツイスターズ』 評点:★3.5点(5点満点) デカい竜巻が大暴れする映画は美しい 全米で猛威を振るう竜巻に挑む「ストーム・チェイサー」の死闘を描いたディザスター・アクションの快作『ツイスター』から28年、待望の続編がついに登場である。 竜巻に吸い上げさせてその構造を解析するハイテク装置「ドロシー」がベーシックな機材になった、ということくらいしか前作との関わりはないので、今作だけ観てもまったく問題ない。 監督は『ミナリ』(2020年)のリー・アイザック・チョン。竜巻のイメージは『オズの魔法使』(1939年)と密接に結びついており、そのため「アメリカの神話」の一部を成しているとみなすことができる(だからくだんの装置も「ドロシー」という)。 本作はその点にも非常に自覚的で、ロデオ大会や映画館といった、アメリカを象徴するあれこれが次々と竜巻に襲われる(ニワトリが出てくるところも実は『オズの魔法使』への目配せである)ほか、主人公と仲良くなるYouTuberのストーム・チェイサー(グレン・パウエル)も典型的なカウボーイ・タイプだ。 物語自体が他愛のないものであることは否定できないが、不必要に深刻ぶらないところも好感が持てるし、何よりデカい竜巻が大暴れする景気のいい映画はそれだけで美しい。 STORY:気象学の天才ケイトは故郷オクラホマで連続して巨大竜巻が発生していることを知る。彼女は学生時代の友人ハビ、竜巻チェイサーのタイラーと共に竜巻内部に秘密兵器を仕掛けるという前代未聞の"竜巻破壊計画"を立てる。 監督:リー・アイザック・チョン出演:グレン・パウエル、デイジー・エドガー=ジョーンズ、アンソニー・ラモス、ブランドン・ペレアほか上映時間:122分 全国公開中 『コンセント/同意』 評点:★3.5点(5点満点) 「実際に起きていたことは何か」を示す意味 虫唾が走る、という言葉がぴったりくる。これは映画自体に対するものではなく、本作が赤裸々に描き出したフランスの作家ガブリエル・マツネフのおぞましい所業に対する生理的な反応である。 本作はペドフィリアのマツネフが14歳の少女を言葉巧みに食い物にし、搾取し、しゃぶりつくすさまをグラフィックに提示してみせる(なので、性的に傷つけられた経験のある人の鑑賞には適さないと思う)。 そういう表現なのは意味があって、つまり、いかに文学的な美辞麗句で糊塗することが可能だとしても(実際にマツネフはそれに成功したので文学者として高く評価されていたわけである)、実際には混乱した少女を興奮したキモいおじさんが凌辱して悦に入っていただけだ、ということがしっかり分かるようになっている。 ペドフィリアはその性質上、次々とターゲットを変えていくものだが(なぜなら「幼さ」に対してしか興奮しないからだ)、被害者の少女たちにとって、それが人生に一度きりの貴重な時間を文字通りレイプされ踏みにじられることなのだ、ということがどれほど残酷か、本作を観るとよく分かる。 主人公を演じたキム・イジュランの存在感も素晴らしい。 STORY:文学好きな14歳の少女ヴァネッサは、50歳の作家ガブリエル・マツネフと〈同意〉の上で性的関係を持つ。その男は自身の小児性愛嗜好を隠さず、道徳や倫理への反逆者と注目されていた。だが、その関係は少女の後の人生に影を落とし......。 監督:ヴァネッサ・フィロ出演:キム・イジュラン、ジャン=ポ-ル・ルーヴ、レティシア・カスタ、エロディ・ブシェーズほか上映時間:118分 シネマート新宿ほかにて全国順次公開中