天才が”自由”を知った14歳での「旅」…大昔から台湾には「インターセクショナリティ」が存在していた...!
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第16回 『「私が愛するのはホモサピエンスです!」…台湾の若き天才が「トランスジェンダー」を受け入れるまでの“衝撃の”過去』より続く
14歳の旅で知った自由な伝統社会
「男と女」という二者択一から自由になる。この考えのはじまりも、やはり10代にあります。 14歳で中学を中退したとき、校長先生をはじめとする先生がたはみな、全面的に祝福してくれました。 中退後、私が最初にしたのは旅に出ること。目指したのは、台湾北部。タイヤル族の住む山岳地帯でした。 台湾原住民の文化は、それぞれかなり異なっています。 たとえばアミ族など母権制の原住民もいます。また、母権制でも父権制でもない社会を築いた原住民もあり、彼らにとってジェンダーは、左利きかどうかと同じことで、リーダー選びには関係ありませんでした。 さらにジェンダー表現に関しても、性別が3つ、あるいは5つあったりする原住民がいます。 つまり台湾には、いにしえから、ダイバーシティ(多様性)もプルラリティ(多元性)も存在していたということです。
これからの時代に必要な「視座」
私たちはいろいろな属性やアイデンティティをもっていますが、どれも尊重されるべきものです。 それなのに「男性で年上だから優遇される」「外国人でLGBTQ+だから偏見の目で見られる」など、属性やアイデンティティの組み合わせによって起こる差別もあります。その事実に気づき、なくしていく「インターセクショナリティ(交差性)」の視座をもつことが大切です。 インターセクショナリティの概念は、「女性にも選挙権があって当然だ」といったフェミニストたちの運動や、LGBTQ+の理解を求める活動によって、進化してきました。 かつてマイノリティとされていた女性が当たり前に投票できるのは、かつて声を上げてくれた人たちのおかげです。 私たちがこうした過去から学べることも、たくさんあります。