ざこばさん追悼 ホンマに出してどないすんねんの川藤幸三は…
桂ざこばさんが亡くなったというニュースには驚きました。そのざこばさんについて12日、阪神OB会長の川藤幸三さん(74)がこんな話をしてくれました。 「ワシら、あのコマーシャルでな、世間の人に認めてもらったというか、分かってもらったというかな。あれで、おまえ、有名にしてもろたようなもんやからのう…」 これを聞いて「ああ、やっぱり」と思われる方も多いのではないでしょうか。あれは95年ごろに放送されたサントリー・モルツのCMでした。 居酒屋でビールを飲みつつ、テレビの野球中継を見るざこばさん扮(ふん)するサラリーマンが「川藤、出さんかい!」とテレビに向かって叫びます。 すると本当に「代打川藤」が告げられるのです。しかし、それを見てざこばサラリーマンは「ホンマに出してどないすんねん」とボソリ。そしてビールを飲む-。 当時、川藤さんはすでに引退していましたが、川藤さんのキャラクター、そして阪神を包む当時の空気感を実によく表したCMで記憶に強く残っています。 この日、京セラドーム大阪のオリックス戦に訪れていた川藤さんは「あのコマーシャルでな…」としんみり話し、当時の裏話も教えてくれました。 モルツ球団で集まったときに、CMをつくる人から「代打に出るときってどんな感じなんですか」と言われたそう。「そんなんベンチ裏でバット振って、監督が『おい、行くぞ』言うたら出ていくんですわ」と応える川藤さん。「一度やってください」とリクエストされ「かまへんで」とやったら、その様子がそのままCMになっていたと言います。 「撮ってるのも知らんかった。あんなんになってるなんて全然、知らんかったわ。他の人にコマーシャルやってますね言われて、初めて見たんや」 それにしても「ホンマに出してどうすんねん」と言われてどう思ったのか。 「そうやろな、おもたよ」と川藤さんは笑います。実際にざこばさんに会ったこともあるそうですが、特に友人付き合いには発展はしなかったそう。それでもあのCMへの思い、そしてざこばさんへの感謝は川藤さんの中に強く残っているようです。【編集委員・高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)