ラグビーW杯残り1年。世界選抜に惜敗した日本代表に浮き彫りになった課題とは?
後半には攻撃リズムをつかむ
3点差に詰めたこのゲームを「大健闘」と頷く日本代表ファンは多くないかもしれない。本来の主力候補に怪我人や代表資格取得前の選手がいたこと、やや突貫工事気味で迎えた前年の同カードを27-47としていたことを考慮しても、である。 もっとも選手たちからは前向きな意見が多く出ていた。相手の足が止まりだした後半、一気に追い上げていたからだ。 聞き手の質問内容によっては課題を示していた稲垣も、第一声は「僕らがボールを持った時はいいアタックができたと実感しています。僕らタイトファイブ(前5人)が勢いを出し、相手ディフェンスの枚数を減らすことで外にチャンスも生まれました」としていた。 攻防線上へ鋭角に走り込む「アロー」という動きをする選手の背後から、相手と間合いを取った選手が勢いよく突進。ナンバーエイトのツイ ヘンドリックや途中出場でロックのヘル ウヴェらは、接点周辺の隙間をえぐった。 時間が経つほどに持ち前の加速力を披露した左ウイングの福岡堅樹は、「後半の最後の最後まで、自分のスピードが落ちなかった」。 ボールを使わず走り込んだ和歌山合宿、実戦セッションとダッシュ系メニューを交互に行った宮崎合宿の成果を見た。 繰り返しになるが、この日の前半は攻防両面でのひずみのため大量ビハインドを背負った。それでも終盤にはリズムを掴んでいた。途中出場したスクラムハーフの田中史朗は、昨今の進化に注目した。 「前回(の世界選抜戦)では前半に点差がついてそこから崩れていったのですけど、今回は点数を取られても誰も諦めることなく前を向き、声を出していた。1人ひとりがレベルアップしたからこそ、負けてはしまいましたけど善戦できたのだと思います」 次の相手のニュージーランド代表は、日本代表が看板とするアンストラクチャーからの攻めに秀でる。 ただ、ニュージーランド代表は、今日27日に神奈川・日産スタジアムでオーストラリア代表と試合を行うため、主力候補の大半は、試合後に離日してイングランド代表などに挑むヨーロッパ遠征を見据える。日本代表戦には「日本遠征追加メンバー」とされる若手勢が出場の見込みで、ベストメンバーではなくなるが、強敵であることには変わりない。日本代表が世界選抜戦のような前半の過ごし方をすれば、追い上げようのない点差を招きうる。 評価の難しい「前哨戦のそのまた前哨戦」を「10点中6点」と見るジョセフHCは、こう総括した。 「いいペースで成長しています。今回が難しい試合になるのは想定していました。宮崎入りの時はトップリーグ明けで、結束力を作るのに時間がかかったので。課題を克服し、さらに成長していきたい。楽な試合はないですが、選手たちも、私もやりがいを感じているところです」 世界選抜戦での課題を再度レビューし準備に取り掛かりたい。 (文責・向風見也/ラグビーライター)