北朝鮮の憲法にも根拠なし…「金正恩の責任」避けようと「密かに派兵」
北朝鮮が25日、外務省のキム・ジョンギュ・ロシア担当次官を通して北朝鮮軍のロシア派兵を事実上認めた中、北朝鮮の憲法などに今回の派兵に関する明示的な根拠はないことが把握された。内部的に一定の手続きを踏んだ可能性はあるが、自国民を死地に派遣する状況に関して最小限の法的根拠もないということだ。北朝鮮が派兵事実を国内で知らせていない中、派兵の最終決定権者である金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が責任を回避するのにこうした点を活用していると専門家らは分析している。 中央日報が29日、関連専門家らと共に北朝鮮社会主義憲法(2019年8月改正)を分析した結果、派兵関連条項は全くなかった。朝ロが6月の平壌(ピョンヤン)首脳会談で締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」(朝ロ協力条約)批准を通じて事後の正当性を確保しようとするのも、こうした派兵関連の法的根拠が不備である点を意識したものとみられる。 憲法にこの条約と結びつけて解釈できる内容は存在する。北朝鮮の対外活動原則を含む第17条だ。 第17条は「国家は自主性を擁護する世界人民と団結し、あらゆる形態の侵略と内政干渉に反対し、国の自主権と民族的、階級的解放を実現するためのすべての国人民の闘争を積極的に支持する」と規定している。「すべての国人民」にウクライナと戦争中のロシアが含まれると主張することができるということだ。 朝ロ両国がこの条約の批准・発効作業に速度を出す点、6月の朝ロ首脳会談当時に「ウクライナでの特殊軍事作戦を遂行しているロシア政府と軍隊と人民の闘争に全的な支持と強い連帯性を表示する」とした金正恩委員長の発言もこうした分析を後押しする。 専門家らは北朝鮮軍が「党の軍隊」を標ぼうしているだけに党規約にも注目した。朝鮮労働党規約(21年1月改正)は「朝鮮人民軍はすべての軍事政治活動を党の領導の下で進行する」と規定している。金正恩委員長が執権して以降、各種会議・協議体を設けて労働党中心の政治システムを整備するのに注力してきただけに、形式的な手続きを踏んだはずだというのが専門家の説明だ。 慶南大のイム・ウルチュル極東問題研究所教授は「党規約は平時に党中央軍事委員会を最高軍事指導機関と規定している」とし「これを通じてロシア派兵を検討・決定した可能性が高い」と話した。党規約第30条は「中央軍事委員会は党大会と党大会の間の党の最高軍事指導機関」としている。 憲法や党規約に派兵に関する根拠がないのは、戦時動員体制を標ぼうする北朝鮮が海外派兵という状況自体を想定していなかった可能性を傍証する。さらに派兵で発生し得る国内外的な責任を回避しようという側面もあるというのが、専門家らの指摘だ。北朝鮮は最高尊厳に傷を残すことをダブーとするためだ。 ただ、北朝鮮が最高指導者を頂点とする唯一指導体系を徹底しているだけに、いかなる手続きであれ金正恩委員長の承認があった可能性が高い。北朝鮮はかつて核実験・大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射のような主要な意思決定過程で、主務部署の軍需工業部が多角的に検討して出した報告書に金正恩委員長が署名する方式で承認したのを公開した事例があるからだ。今回も軍を掌握する総参謀部の報告書を承認する形式で金委員長の派兵関連の意思決定が行われた可能性があるということだ 専門家の間では北朝鮮のロシア派兵で金委員長が国際犯罪に対する処罰のために設立された国際刑事裁判所(ICC)の提訴対象になる可能性があるという見方も出ている。ウクライナの戦場に派兵された北朝鮮軍が集団殺害罪、反人道犯罪のような戦争犯罪を犯す場合、軍に対する指揮責任は派兵と参戦を決定した金正恩にまでさかのぼる余地がある。 原州漢拏大のチョン・デジン教授は「ICCに関するローマ規定(Rome Statute)によると、ロシアの不法な侵略戦争に派兵した事実だけでも共同正犯になり得る」とし「これを懸念して国際世論や戦場の状況によって過去のベトナム戦争や第4次中東戦争当時のように派兵の事実を公式的に認めない可能性もある」と話した。