【いよいよ最終回「海に眠るダイヤモンド」】なぜ現代編を2024年ではなく、2018年にしたのか? 「最大の謎」ーー2018年を“あえて描いた”その理由
さかのぼって1955年、長崎・端島。ここでは鉄平が家族や隣人と暮らしている。 炭鉱が主要産業で、それを束ねる企業・鷹羽鉱業で勤務する鉄平を取り巻く女性たちは、食堂の娘・朝子(杉咲花)、鷹羽鉱業職員の娘・百合子(土屋太鳳)、福岡から来た素性のわからないリナ(池田エライザ)の3人で「いづみ」という人物はいない。 この3人の誰がいづみなのか、とドラマの初期はSNSで考察が盛り上がった。 第1話の冒頭、夜の海に赤ん坊を抱え、小舟で出ていくリナがいづみで、赤ん坊が玲央の父親なのではないか等々……。
※以下、ネタバレ箇所があるため、気をつけて読み進めてください。 ■朝子の波乱万丈な人生 謎を引っ張りに引っ張って、いづみが朝子であったことがわかるのは第7話であった。出水朝子で「いづみ」。端島の食堂の看板娘として、貧しいけれどそれなりに平凡な日々を大切に送っていた朝子は、思いもかけず波乱万丈な人生をたどることになる。 中盤以降、朝子が主役じゃないかという感想もあったほど回を追うごとに朝子の人生は劇的なことになっていく。
そこには朝ドラ感がある。朝子の人生はまるで、少女期苦労した人物がビジネスで成功して自身の足跡を振り返る、朝ドラの絶対王者『おしん』(1983年度)のようにも見える(『おしん』は山形から出稼ぎに出て苦労した主人公がやがてスーパーの経営者となる)。 朝子はその小さくきゃしゃなカラダにたくさんの重荷を背負わされている。戦争中、百合子が長崎で被爆するきっかけを知らずに作ったという過去があった。 だが百合子は朝子にそのことを知らせていない。母を被爆による後遺症で亡くし、自分もいつか……とおそれながら百合子は生きている。
そんな彼女を炭鉱会社の息子・賢将(清水尋也)は守ろうとする。 一方、朝子は鉄平と両思いだったのだが、鉄平の兄・進平(斎藤工)が炭鉱事故で亡くなったことで事情が変わる。彼の内縁の妻で息子・誠もなしていたリナの面倒を、鉄平は見ざるをえなくなるのだ。 ■朝子と鉄平の顛末に胸が痛む 最終回目前、第8話では、朝子と鉄平がじょじょに引き裂かれていく。端島では皆、それぞれ、何かを我慢しながら精一杯幸せを見つけようと懸命に努力しているのだ。