「高齢者ばかり攻撃する社会に未来はない」「でも高齢者にも不寛容な人が増えている」医師・和田秀樹×プログラマー・若宮正子が語る<超高齢社会の未来>
総務省統計局によれば、2022年時点で、日本の65歳以上の高齢者の人口割合は、総人口の約3割におよぶそうです。そんな超高齢化の時代に、「高齢者がいきいきと暮らすことで、ニッポンの経済も社会も元気になります」と言うのは、精神科医の和田秀樹先生。今回は和田先生と世界最高齢プログラマーの若宮正子さんの対談のようすをお届けします。若宮さんは、「高齢者だから消極的ってことはあり得ないと思う」と言っていて――。 【写真】世界最高齢プログラマーの若宮正子さん * * * * * * * ◆いまの高齢者はアクティブで長生きすることに前向き 和田 これは自慢というわけではなくて、2022年の年間ベストセラー第1位は、私の『80歳の壁』(累計60万部超)だったんです。 嫌なことを我慢せず、好きなことだけして、「80歳の壁」を越えようよ、という内容なんですが、これが売れた理由は、やっぱりそれだけ高齢者の人たちが、もっと元気になるためにいろんな知識を得たい、という表れだと思うんですよ。 とにかく、いまの高齢者はアクティブで長生きすることに前向きなんです。 若宮 高齢者だから消極的ってことはあり得ないと思います。本当にみなさん元気で行動的です。 和田 それなのに、高齢者が交通事故を起こすだけで、「免許を取り上げろ」なんて必要以上に騒ぐんです。高齢者ばかりを攻撃する社会に未来はありませんよ。
◆高齢者にも不寛容な人が増えている 若宮 一方で、高齢者のほうにも、不寛容な人が増えてきたように思います。例えば、子どもが大声を出すのは元気な証拠です。それなのに、「公園で子どもがうるさい」「幼稚園から騒音がする」とすぐに文句をつける。 高齢者の憩いの場でもある各地の「ラジオ体操の会」も最近は困っているようです。「うるさいから音を小さくしろ」という苦情が、参加しない高齢者から多く寄せられるそうですから。 和田 現に日本は超高齢社会ですし、長生きすれば誰もが高齢者になります。日本が、明るく住みやすい国になるかどうかというのは、私たちがどれだけ寛容になれるかどうか、ということかもしれませんね。 若宮 実感を込めて頷(うなず)きます(笑)。 和田 正直に申せば、私も反省することがあります。高齢者マーク(高齢運転者標識)がついている車の後ろにつくと、すごくゆっくり走っていてイライラすることがあります(苦笑)。 だけど、「そうだよな、高齢者が増える社会というのは、こういうことだよな」と思い直すことで、一時のイライラは収まります。お互い寛容になれば、年齢に関係なく、みんなが住みやすい社会になります。 若宮 社会全体が不寛容なままですと、あちこちでギスギスしてしまって、いいことがありません。世代を越えて、お互いに寛容になって、お互いに共存していくという考え方がこれからは必要なんでしょうね。