献体写真ネット公開に強い拒否反応「もう献体しない」 日本篤志献体協会・理事長「希望者に説明を尽くさなければならない」
●日常ではないことを忘れてはいけない
坂井さんは、遺体の解剖について定めた「死体解剖保存法」において、最も重要なことが書かれているのは、20条だと指摘する。 〈死体の解剖を行い、又はその全部若しくは一部を保存する者は、死体の取扱に当つては、特に礼意を失わないように注意しなければならない〉(同20条) 「『礼意を失わない』と漠然とした表現であっても、ここが重要です。この条文の実現のために、遺体の解剖は教育・研究目的にあり、解剖できる資格者と、解剖は医学に関する大学の特別な部屋でしなければならないとするなど、ほかの条文の規定が設けられていると考えます」 24歳から65歳まで、解剖学の研究にあたってきた坂井さんは、これまで1000~1200の遺体と向き合ってきたという。 「ご遺体の解剖に習熟する中で、最も恐ろしいことは、それが非日常的なものであるという感覚を失うことです。日常的な感覚とは違うことだと絶えず思い出さなければいけません」 解剖学の授業では、学生たちが手付かずの遺体に出会う。 「何十年かの人生を歩んできた人の身体をメスで切り開きながら、人体の構造を探していく。どこかで人間を感じさせないものになっていく。それでも、学生たちはそのご遺体を単なる物体とは思っていません。授業の初日に、ご遺体と向き合い、解剖学の対象になる解剖体へと変えていったのは自分自身ですから。このことを医療者は忘れてはいけません」
弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎