<甲子園交流試合・2020センバツ32校>待ちわびた夏/上 大阪桐蔭、実家生活でリフレッシュ/履正社、SNS動画で練習励む /大阪
新型コロナウイルス感染拡大で、選抜大会の中止が決まったのは、3月11日だった。 春の選抜出場が決まった時に「春夏連覇を目指す」と意気込んでいた履正社の関本勇輔主将(3年)は「気持ちを切り替えて夏までにチームをまとめたい」と前を向き、岡田龍生監督は「夏こそ日本一を目指す」とコメントした。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 大阪桐蔭は春夏連覇した2018年以来の選抜出場のはずだった。部員の多くが自宅から通う履正社と違い、大阪桐蔭は全寮制で、携帯電話を持つことを禁止している。寮の電話を使えるが、利用する部員はあまりいない。選抜中止が決まった直後、西谷浩一監督は、実家の家族に宛てて、手紙を書くよう促した。摂津市に実家がある藪井駿之裕主将(同)は「3月11日は、東日本大震災が起こり日本にとって悲しいことが起こった日で、僕たちにとって選抜がなくなった特別な日になりました。夏に向かってやっていこうと思ってる。これから迷惑を掛けると思うが……」とつづった。 4月7日、緊急事態宣言が発令された。全国各地から集まった大阪桐蔭の部員は、翌日から順次、公共交通機関を使わず親が迎えに来て車で帰省した。西谷監督は、日頃は全寮制で部員の状況を把握しやすい環境にあったが、帰省中は「帰省先の状況はさまざま」と部員に指示を出すことはしなかった。 実家に帰った藪井主将は、両親から「残念やったね、夏の大会あったらがんばりや」と励まされた。母の手作りの料理はやっぱり格別だった。「全部おいしかった」とほほを緩める。「身の安全を確保しながら、自分のできることをやる」と地元の中学時代のチームメートと、体力を落とさないよう素振りやキャッチボールなどで体を動かしたことが刺激になり、実家生活でリフレッシュできた。 一方、携帯電話の使用が許されている履正社は、宣言期間中も無料通信アプリ「LINE」を利用して、プレーイングマネジャーの高橋佑汰選手(3年)から、トレーナーが作った体幹などのトレーニングメニュー1本約3分の動画が逐次、送られて来た。選手の間でも連絡を取り合ったが、「悔しい」といった言葉が並んだ。 自宅から通う選手が多いため、普段の平日の練習時間は3時間ほどで、自主練習を重んじる。関本主将は「これだけ野球ができない期間が続いたのは初めて。もどかしい気持ちが常にあった」というが、送られてくる動画でのトレーニングに加え、自身の足りない部分を考えて、走り込みや筋力トレーニングに励んだ。そんな時、同校出身でプロ野球・阪神の井上広大選手(19)から3年生に、「次の舞台へ向けて、気持ちを切り替えて」というメッセージがLINEで届いた。メッセージは1、2年生にも伝えられ、先の見えない期間を過ごす励みになった。 大阪桐蔭は5月上旬に全部員が実家から寮に戻り、履正社は自宅待機の期間が続いた。夏の選手権大会があることを信じて。【荻野公一、隈元悠太】