【あなたらしく、わたしらしく―男女共生はいま】女性の県外流出(上) 働き方 選択肢求めて東京に
「こちらの商品はいかがですか」。ランニングシューズを品定めする外国人に、英語で接客する。高橋渚さん(24)にとって、日常の光景だ。東京都内にあるスポーツアパレル販売店。都内在住や観光中の外国人客は多い。異文化が身近にある生活に、高橋さんは充実感を覚える。 福島県喜多方市で育ち、福島大人間発達文化学類に進んだ。専攻したのは西洋史。いつも頭の中には、外国文化への憧れがあった。だが、大学での学びや興味を生かし、やりたいと思える仕事は福島で見つけられなかった。おのずと視線は首都圏へ向く。「とにかく選択肢は多い。東京に行けば、何か見つかると思えた」 ◇ ◇ 福島県からの女性の県外流出が深刻だ。総務省のまとめでは、転出者が転入者を上回る「転出超過」による女性の減少数が、2021(令和3)年までの10年間で約4万1千人に上り、都道府県別で最多となった。中でも、大学生や専門学校生の就職時期と重なる20代前半が顕著だ。福島大キャリア支援課によると、2022年度卒業の県内出身の男女のうち、3割が県外に就職した。県外を選ぶ学生は一般企業の「知名度や、やりがい」「女性や若手の活躍」などを理由に挙げる。
福島大新卒者の県内の就職先は、公務員や金融関係など、いわゆる“安定した職業”が多い。高橋さんも、女性が4年制大学を卒業して地方でキャリアを積むなら、その選択肢は間違っていないと思う。自身も幼い頃から「安定している公務員になりなさい」と周囲から勧められた。そのつもりで大学に進んだが、学びや友人との交流を深める中で、目指す進路が変わった。 県外に出る決心には、ずっと抱いていた「地方都市ならではの、しがらみへの違和感」も影響した。年頃となれば周囲で結婚、出産の話題が尽きない。昔ながらに、家事をするのは女性という固定観念も強いように思える。親の反対を押し切って、上京した。 ◇ ◇ 休日は歴史の風情を感じる都内の建物や公園を巡る。お気に入りの一つが港区の迎賓館赤坂離宮。正門前の公園で行き交う人を眺めると、人種もファッションも多種多様だ。職場でも、自由を重んじる空気がある。「都会では良くも悪くも、それぞれが生き方に干渉せず、思い思いに生きている」