自動車「不正」ナゼ 生産・販売できない“不正車種”…広がる影響と懸念【バンキシャ!】
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自動車などを量産するために必要な「型式指定」の申請をめぐり、5つの大手企業で不正が行われていたことが明らかになりました。バンキシャ!が話を聞いたのは、トヨタ自動車東日本の工場の現役従業員たち。不正による生産停止の影響と心境を明かしました。【バンキシャ!】 *** 9日。バンキシャは、トヨタ自動車の本社に近い、愛知県東郷町へ。 バンキシャ 「いやー、すごい。ずらーっといろんなクルマがあります」 行われていたのは、月に1回開催されている、クルマ好きが集まるイベント「ホワイトハウスpresents Cars&Coffee」。様々なタイプのクルマ約350台が集結した。 バンキシャ 「ポルシェかっこいいですねー。あ、あぶない刑事って書いてある。だからパトランプなんだ」 クルマ好きが、不安に感じていたのは―― 自動車業勤務 「データの不正があるとやっぱりあやしい…不信感は抱きますね。実際は安全でも」 自動車業勤務 「たまたまこういう形で明るみに出ただけというのはあると思う。バレていないだけで他にもあるんじゃないかみたいな」 自動車などの量産に必要な「型式指定」をめぐり、大手自動車メーカーなど5社が、安全性を確認する試験で不正を行っていた問題。3日の会見で―― トヨタ自動車 豊田章男会長 「お客さま、クルマファン、すべてのステークホルダーの皆様に心よりおわび申し上げます」 国交省はこれまでに立ち入り検査を、4日にトヨタ自動車(本社/愛知・豊田市)、5日にヤマハ発動機(本社/静岡・磐田市)、さらに6日にはスズキ(本社/静岡・浜松市)に実施。 日本を代表する企業が、なぜ不正を行ったのか―― バンキシャが取材を進めると、不正問題の背景に業界が抱えるある事情が見えてきた。 トヨタの工場で働く 現役従業員 「うちらは不正はしてないよ」「基準よりも別なことをしてしまった」と職場で話していたという。 *** 8日。バンキシャが訪ねたのは、神奈川県内にある中古車販売店「BASE AUTO」。店が扱う、およそ150台のうち約1割が、今回、不正が発覚した車種だという。 成田アリ社長 「不正に関わっているクルマを売っていいのかどうかわからなくて困っている。とりあえず販売しないことにしている。そのまま残っていると、駐車場代金も払わないといけないので、会社としてはマイナスの影響が出ます」 駐車場代や人件費など毎月500万円ほどかかる。クルマが売れないと大きな痛手になるという。 さらに客からはこんな声が―― 成田アリ社長 「いままで信頼してきたことを、後悔しているような話は聞きます。この先どういう車を選んで、何を買えばいいかわからないという相談が入ってくる。本当はみんなにアピールして『いい車ですよ』って売りたいんですけども、それができない。つらい」 この店では、当該車種の販売をしばらく見送る予定だという。 今回の不正問題を受け、トヨタとマツダは6日、合わせて5つの車種の生産を停止した。 トヨタは部品の供給などを行う取引先が間接的なものも含めて、1000社以上ある。地域経済への影響が懸念されている。 *** 7日、バンキシャは、一部生産を停止したトヨタ自動車東日本の岩手工場(岩手・金ケ崎町)へ。 バンキシャ 「朝の通勤ラッシュが始まっています。こちらの工場では4種類の車を生産していますが、そのうちのこちらの車(ヤリス クロス)が生産停止になっています」 残る3車種の生産は続けられているためか、出入りする多くの車両がある。工場に大きな変化はないように見える。 バンキシャが話を聞いたのは、トヨタの岩手工場の現役従業員。 不正問題を受け、工場内の変化は――? トヨタの岩手工場 現役従業員 「見る限りだと正直さほど変わらないというか。結局は自分たちというよりも、上の人たち。設計時点の問題というところ」 大きな影響はないというが、不安な点も… トヨタの岩手工場 現役従業員 「まあ給料ですね。自分はバンバン残業して、バンバン稼ぎたい派なので。そういうところでは不安といいますか、しっかり自分の生活を見つめ直さないとかなーというふうには思います」 生産を停止してから残業がなくなったため、給料が減る可能性があるという。 バンキシャ 「残業が減ると給料は変わる?」 トヨタの岩手工場 現役従業員 「変わります。正直変わりますね。高くて5万円くらいですかね。5万円違うとまったく違いますよ、生活が」 今回の不正について、職場ではこんなやりとりがあったという。 トヨタの岩手工場 現役従業員 (職場では)「うちらは不正はしてないよと」 さらに別の工場の従業員も。 トヨタの宮城大衡工場 現役従業員 「良かれと思ってやったことが、結果こうなっているのは若干あると思うので」 一体どういうことなのか――。大手自動車メーカーなど5社がクルマの安全性を確認する試験で起こした“不正行為”だ。 宮城県大衡村にあるトヨタ自動車東日本の工場では、6日から3車種(カローラ フィールダー、カローラ アクシオ、ヤリス クロス)の生産を停止している。この工場の現役従業員は… バンキシャ 「豊田会長の会見は見ました?」 トヨタの宮城大衡工場 現役従業員 「ちょっとだけですけど」 バンキシャ 「話を聞いてどんな感想?」 トヨタの宮城大衡工場 現役従業員 「なんていうんですかね。そんな簡単なことじゃないと思います。けど、良かれと思ってやったことが、結果こうなっているのは若干あると思うので。うーん…」 実は「不正」とされた38車種の試験のうち、トヨタの「後面衝突試験」と「歩行者保護試験」、ホンダの「騒音試験」は、国の認証試験の条件を満たしてなかったが、より厳しい基準で行われたものだった。 そのため豊田会長は会見で「安全性に問題はない」と説明。一方で「不正といえば不正でやってはいけないことをやってしまった」とも語った。 トヨタの宮城大衡工場 現役従業員 「まあでも国の基準は基準だしなっていう感じはするし、まあでも基準は超えてるし。なんとも言えないなって感じがしましたね、個人的には」 *** 今回の不正が起きた背景には何があったのか? 専門家は―― モータージャーナリスト 川端 由美さん 「今回不正の該当している時期を見てみると、新車をすごくたくさん出していくような動きがあった時期なんです。世界の競争が厳しくなって、世界一をグローバルで争うような時期。そんなときに新車をたくさん出していた。なんとしてでも期日の中で認証しなければというプレッシャーが現場にあったんじゃないかと思います」 今後、日本のメーカーが世界と競い続けるには、「ルールを守れること」も重要になってくると指摘した。 モータージャーナリスト 川端 由美さん 「日本が品質保証とか認証基準をきちんと守れる国ということを、もう一度再アピールする。安全基準をきちんと通す技術力はあるので、そこに対してウソをつかない、不正をしないというところを補っていくことで、自動車産業を守っていけるのではないかと思います」 *6月9日放送『真相報道バンキシャ!』より