2023年度の「不適切会計」開示は58社・62件 3年連続で増加、業種別ではサービス業が最多
市場別 「東証プライム」が27社で最多
市場別では、「東証プライム」が27社(構成比46.5%)で最も多かった。次いで、「東証スタンダード」が18社(同31.0%)、「東証グロース」が11社(同18.9%)と続く。 2013年度までは新興市場が目立ったが、2015年度以降は国内外に子会社や関連会社を多く展開する旧東証1部が増加。2023年度も「東証プライム」が最多だった。
業種別 最多はサービス業の15社
業種別では、「サービス業」の15社(構成比25.8%)が最も多かった。サービス業は、従業員の不適切取引などによる「着服横領」や連結子会社での過大請求などの「誤り」が増えた。 次いで「製造業」の12社(同20.6%)。いずれも国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多かった。 ◇ ◇ ◇ 今年4月19日、証券取引等監視委員会は不動産業の(株)アルデプロ(東証スタンダード)に対し、売上を過大に計上して四半期報告書の虚偽記載を行った等の法令違反の事実が認められたとして2,100万円の課徴金納付命令を発出するよう勧告した。 不動産売買が循環取引の一部を構成し、循環取引に関し実態のない売上高、売上原価および営業利益を計上する会計処理を行い、2023年7月期第3四半期の四半期報告書で虚偽の開示をした。東京証券取引所は、アルデプロの内部管理体制等について改善の見込みがなくなったとして、アルデプロを3月22日付で整理銘柄に指定。その後、同年4月23日付で上場廃止となった。 金融庁は2023年12月26日、業界準大手の太陽有限責任監査法人(東京都港区)に新たな契約締結を3カ月禁じる一部業務停止命令を出した。顧客の(株)ディー・ディー・エス(2023年8月上場廃止)が2022年8月、財務諸表の訂正報告書を東海財務局に提出する際、重大な虚偽が残っているにもかかわらず、監査を承認していた。太陽有限責任監査法人は近年、監査先を増やしており、業容の急拡大に伴う中で不祥事が生じた。大手から準大手などに監査法人が交代する上場企業が増えている。監査法人の交代理由の確認は、これまで以上に必要になっている。 コロナ禍が落ち着き、企業活動は平時に戻ったが、2023年度は58社、62件の不適切会計が判明した。売上、利益拡大など業績優先の意識やステークホルダーに対する情報隠蔽など、不適切会計を根絶できない背景には様々な要因が隠れている。また、不適切会計が判明後の再発防止の仕組みづくりは容易ではない。上場企業は、改めてコンプライアンス(法令遵守)やコーポレートガバナンス(企業統治)に対する取り組みを精査、地道に守ることが必要だ。