明確な事業撤退方針で変革を遂げた日立、日本企業が陥る「最悪のパターン」との目に見えない決定的な違いとは
日本企業はかつて、数多くの独創的なイノベーションを生み出し、グローバル市場で圧倒的な存在感を放っていた。しかし、近年では競争力の低下が顕著となり、不正や不祥事、ハラスメントに関する報道も後を絶たない。その要因として「企業の現場力の低下が影響している」と指摘するのが、シナ・コーポレーション代表取締役の遠藤功氏だ。2024年7月に著書『新しい現場力:最強の現場力にアップデートする実践的方法論』(東洋経済新報社)を出版した同氏に、日本企業から失われつつある「現場力」と、その衰退原因について聞いた。(前編/全2回) 【画像】遠藤 功『新しい現場力: 最強の現場力にアップデートする実践的方法論』(東洋経済新報社) ■ 「現場力の劣化」が不正や不祥事を引き起こした ――著書『新しい現場力:最強の現場力にアップデートする実践的方法論』では、先端テクノロジーの社会実装が進む時代だからこそ「現場力が重要」と述べています。そこにはどのような意味が込められているのでしょうか。 遠藤功氏(以下敬称略) 昨今、AIやDXといった言葉が飛び交っています。デジタルツールそのものが高度化していることは疑う余地がありません。しかし、社会を変えるために重要なのは「ツールをいかに賢く使いこなすか」という視点であり、そのためには「現場力」が欠かせません。 現場力とは、それぞれの現場が持っている問題解決力を指します。十分な現場力が備わっていれば、ツールを賢く使ってDXを進めることができるでしょう。一方で、現場力がなければツールを使うアイデアも知恵も出てこないため、DXは進みません。DXの重要性が語られながらも、DXが進まない企業が多い背景には「現場力の弱さ」があるのです。 ――現場における問題解決力の衰退は、どのようなところで見られるのでしょうか。 遠藤 ここ数年、さまざまな大企業で不正や不祥事、ハラスメントなどの問題が次々に起きています。そして、これらの問題の多くは現場で起きています。しかし、そもそも現場の人間は不正をしたいわけでも、不祥事を起こしたいわけでもありません。しかし、結果として問題が起きてしまっているのです。 その背景にあるのが「現場力の劣化」です。かつての日本企業は、現場の人たちが自発的に仕事の方法を改善したり、新しい価値を生み出したりしていました。そこには「現場主導」「現場ドリブン」という日本企業独自の強みがあったのです。 私が現場力に注目する理由は、日本企業がグローバル市場で戦う上での最大の強みが現場力である、と考えるからです。現場力に関して言えば、海外企業に比べても遜色なく、むしろ日本企業の方が優れています。現場で働く人のモチベーションや志、チームワークは日本の宝、といっても過言ではないでしょう。 これまでの歴史を振り返っても、現場力があったからこそ、日本らしいイノベーションやサービスが生まれてきたわけです。しかし、いつの間にかこの大切な宝が失われたことで、不正や不祥事といった問題が生じています。