宇多田ヒカル初のオールタイムベストが首位 デビュー25周年、トップランナーであり続ける理由
宇多田ヒカル、今の耳/肌に馴染む音にして再リリースする意義
“常に変われる人”という点では、今回新たにレコーディングし直したり、ミックスし直した楽曲を収録したことにもその姿勢が表れている。今の自分であればこう歌う/こういう音にする、というアップデート感覚がそうさせているのだろう。そもそもストリーミングサービスが定着し、それに伴ってプレイリスト機能が人気を集める昨今、ベスト盤というものの存在意義自体が問われているように思う。そうした中で、時代に合わせた新しい形に整えて再発表するということは非常に意義のある行為だ。今の耳/肌に馴染む音にして世に出すことは、時代的にも、そして彼女の信条としても必要なことだったのだろう。とりわけイギリスの気鋭プロデューサーA. G. Cookが参加した「光」は、原曲の美しさやエモーショナルな感覚はそのままに、今の音楽シーン特有のアンビエンスが施され、今作のタイトルのSF的なイメージにも繋がる秀逸な一曲となっている。 また、宇多田ヒカル作品と言えば、文学的な深い歌詞表現が魅力だが、その中にも確かに存在する一人の人間としての等身大の肌感覚を織り交ぜたフレーズは、現代の若い世代にも愛されるべきポイントだ。そうした意味でも、今こそ聴かれるべき一枚である。 ※1:https://www.utadahikaru.jp/news/15xgc_86bd3d/
荻原梓