<モーロクらんらん>(86)ダイコのある日々
ダイコ(大根)が好き。風呂吹きダイコ、おでんのダイコ、豚肉と煮たダイコ、鰤(ぶり)ダイコなどが大好き。ちなみに、ダイコという言い方はダイコンから変化したものだが、ボクは子どものころからダイコと呼んできた。 小林一茶の句に「大根を丸ごとかじる爺(じじい)かな」がある。生のダイコを刻んでサラダにしたらうまいが、丸々かじるのは、さてどうだろう。元気な爺ではあるが、丸かじりのダイコはうまくはなさそう。ちなみに、一茶は歯がぬけてしまい、歯なしの爺だったので丸かじりは出来なかったはず。この句の一茶は、歯のある元気な爺を羨望しているのかもしれない。 余談に及んだが、ダイコは近所の無人野菜販売所、スーパー、道の駅などで買う。葉付きの大根を買って、葉はジャコといっしょに煮ておかずにする。 ダイコの何がいいのか。まず味がよい。冬のダイコはことにうまくてやわらか。毎日のようにダイコを食べる。いくら食べても飽きない。 と、ここまで書いたら、ボクが自分で料理しているのか、と思う人があるかもしれない。料理はもっぱらヒヤマさん(妻)である。ボクはダイコを買いについていくだけ。ときどき、うまそうなレシピを見つけて、こんどはこれを食べようよ、と言うだけ。たとえば、ダイコと牛すじ肉のスープがうまそうなので、ヒヤマさん、これどう?と言うのである。 あっ、一つだけボクが作るものがある。ダイコおろしだ。このところ、ジャコ天を焼いてダイコおろしをかけて食べている。じゃこ天は四国・八幡浜産。いとこがジャコ天を作っていて、例年、今の時期にどさっと届くのだ。(俳人、市立伊丹ミュージアム名誉館長)