3年前と今、東藤なな子の進化と変化「東京五輪で学んだことをパリでは自分から体現する」【バスケ】
前半だけで3P4本の12得点の東藤が見せた積極性
有明アリーナにニュージーランド代表を迎えた「三井不動産カップ 2024(東京大会)」のゲーム1で、女子日本代表は3Pシュートを25/55(45.5%)のハイボリュームかつ高確率で沈め、125-57の大量得点で快勝した。 序盤から各選手が快調にスコアを重ね、守っても絶妙なタイミングでトラップを仕掛けてニュージーランドのミスを誘発。19本のスティールを含む35本ものターンオーバーを引き出し、そこから53得点を奪った。 ただ、FIBAランキング9位の日本に対して、ニュージーランドは26位と明らかな格下。それだけに、この大勝を素直に喜ぶべきかと言われたら、そうではない。パリ・オリンピックにつなげるためにも、大勝の中からも課題を見付けて修正していく必要がある。 「チームとしてのコミュニケーションミスは少なかったと思いますが、前半にディフェンスのギャップポジションを相手に突かれたりと、そういう部分が世界一のレベルを目指してやっている中で、やり切れなかったです。後半は修正できたので、明後日(第2戦)は出ている選手全員が高いレベルでそこをできるようにやっていきたいです」 東藤なな子は、こう試合を振り返った。世界一、つまりは金メダルを目標に掲げる彼女たちに慢心はない。 東藤自身も積極的なプレーでチームを盛り立てた。1Q残り3分37秒で赤穂ひまわりに代わってコートに入ると、ジャブステップから放った1本目の3Pシュートをいきなりスウィッシュで成功。これでリズムをつかむと、同クォーター残り50.1秒には、馬瓜エブリンからのパスを受けて同じ左コーナーから再び3Pをヒットした。2Qにも積極的に得点を狙い、終わってみれば前半で3P4本成功の12得点。味方が作ってくれたチャンスをしっかりとモノにし、日本を勢い付けるきっかけを作ってみせた。試合トータルでも15得点の活躍だった。 6月の北海道大会は地元凱旋となったが、1戦目は2得点、2戦目は8得点とまずまずの結果に終わっていた。その後、正式にオリンピックメンバー12人が決まったことで、東藤の中で一つ緊張がほぐれたのだろう。本人も「自分ができることにどんどん挑戦していこうと思う」と話していた。「選考中は(メンバー入りするために)結果を出さなければいけないというプレッシャーがあったので、まずはメンバーに入るという目標でやっていました。でも、今は金メダルを狙いにいく一員として、ゲームに足りないこと、恩塚(亨)HCがタイムアウトなどで話していたことをコートで表現しようと思ってプレーしています」 前回の東京2020オリンピックでは、最年少の20歳でメンバー入りし、銀メダル獲得という何にも変え難い経験をした。だが、自身の出番は限定的だった。今は違う。23歳となった今も最年少という点は変わらないが、今度はより大きな役割を与えられた中での選出だ。 東京オリンピック当時の東藤の武器は、ディフェンスとドライブだった。今はそこに、この試合でも大当たりだった3Pシュートが加わった。鈴木良和ACとの日々の練習でフォームも改良し、その成果が表れ始めている。責任感や代表での立ち位置も変化した。 「東京オリンピックのときはA代表に選ばれたのも初めてで、どういうものかも分からなかった中で、失敗を恐れずに挑戦しようという気持ちでした。困ったときには先輩たちもいると思ってやっていました。でも、今回は東京の経験もありますし、世界大会などの試合も重ねてきました。その中でできることも増えてきたと思っています。東京オリンピックのときに学んだチーム内での声かけや鼓舞し合えるコミュニケーションを、パリでは自分から体現していこうと思っています」 東藤はそう意気込んだ。東京オリンピックを経て、その後のアジアカップやFIBAワールドカップでは徐々に出場時間を伸ばし、主力となっていった。一方で今年オリンピック最終予選ではメンバー入りを逃す悔しさも味わった。東藤の言葉どおり、3年間で数え切れないほどの経験を重ねてきた。 1つ年上の山本麻衣の存在も刺激になっていると東藤は言う。山本はこの試合でも3Pを6/10で沈め、チームハイの20得点を記録した。コートに入れば年齢は関係ない。山本の強気なプレーを見て、「自分も」と思えているという。そして、ベテランの“お姉さんたち”も東藤や山本のような若手が伸び伸びプレーできる雰囲気を作り上げている。 恩塚HCは、東京オリンピックではアシスタントコーチとして東藤を見てきた。3年前と今。東藤がどんな成長を見せたのか。恩塚HCにそう問うと、以下のような答えが返ってきた。 「東京オリンピック後も、彼女はいつも真面目に一生懸命に頑張ってくれていたのですが、私自身が彼女の良いところを引き出し切れていなかった時期がありました。その時期は彼女も苦しかったと思うんです。でも、その中でもブレずにできることを探して、成長し続けて、しっかりと結果も出して、オリンピックメンバーになってくれました。それを本当にうれしく思いますし、すばらしい頑張りだったと評価しています」 恩塚HCの声のトーンはとても穏やかで、優しかった。 置かれた場所で咲く──高いレベルで戦うからこそ、重要な心構えだ。今の東藤のプレーや言葉からは、その気概が感じられた。ニュージーランドとのゲーム2を終えると、いよいよパリ・オリンピックは目前だ。3年前と今。進化した東藤が再び世界に挑む。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 女子日本代表国際強化試合 三井不動産カップ2024(東京大会) [DAY 1]7月4日(木曜日) 日本代表125-57ニュージーランド代表 <放送>フジテレビ地上波/CSフジテレビNEXTにて生放送 [DAY 2]7月6日(土曜日) 日本代表VS 女子ニュージーランド代表 ティップオフ13:30~ <放送>テレビ朝日系列にて生放送 ※一部地域をのぞく 男子日本代表国際強化試合SoftBank CUP 2024 (東京大会) [DAY 1]7月5日(金曜日) 日本代表 84-85 男子韓国代表 <放送>日本テレビ系列にて生放送 [DAY 2]7月7日(日曜日) 日本代表VS 男子韓国代表 ティップオフ19:30~ <放送>テレビ朝日系列にて生放送
写真/石塚康隆 取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)