預貯金は”時代遅れ?日本中で大号令かかる「貯蓄から投資へ」に感じる違和感の正体
これから金利が上がると期待されている時に、5年や10年ものに預けてしまうと、途中でさらに金利が上がっても反映されず、得策とは言えないわけだ。 セオリー通りに言えば、金利上昇局面ではキャンペーンの特別金利が多い1年物に預け、上昇したら少し長期に乗り換えるのがいい。しかし、これでは複利効果が薄いので、収益性を求めるより、1~3年以内に使うと決まっていて、元本が減っては困る資金の預け先にするのがいいだろう。予定している車の買い替えや家のリフォーム資金、子どもの留学資金などだろうか。
さらに流動性を高めたいなら、6カ月物と1年物の2本に分けるとか、1~2週間満期の定期預金を自動継続で利用するなどもあるが、金利面では普通預金とあまり変わらないのでメリットは少ない。ただ、普通預金だとうっかり使ってしまいそうで心配……という人にはいいだろう。 ■「貯蓄から投資へ」ではなく「貯蓄も、投資も」が大事 昨今は積み立てというと投資ばかり話題になるが、貯蓄の基本は積み立てであり、コツコツ確実に積み上がっていく金額を見るのはうれしいものだ。これだけ貯められたという自信にもなる。元本を積み上げる役割としても定期積み立ては決して馬鹿にはできない。
最初に触れたように、金融商品にはそれぞれ得意不得意がある。預貯金はやはり増やすよりは確実に貯めて使うために利用するのがいい。逆に、NISAやiDeCoで投資信託の積み立てをするのは、コンマ以下の金利よりは増えると期待できるからだ。ただし、将来いくらになるかは約束されず、増えるかもしれないが減るかもしれないので、もうすぐ使うから減っては困る用途には向かない。かなり遠い先の老後資金をイメージするのが適しているのだろう。
そういう意味で「貯蓄から投資へ」というフレーズは間違っている。「貯蓄も、投資も」どちらも必要というのが正しい。政府も投資教育にばかり熱を入れず、このお金の原則をしっかり伝えてほしいものだ。
松崎 のり子 :消費経済ジャーナリスト