「出会いを記念に残すような事がしたかった」 書店で開かれたノンフィクション作家・佐々涼子さんを偲ぶ朗読会 岩手・釜石市
それからSNSを通じてお互いの近況や思いを語り合う交流がはじまりました。 2019年秋には台風で桑畑書店が浸水被害にあったことを知った佐々さんが「片付けの手伝いに来ました」と連絡なしに突然訪れたことも。 (桑畑眞一さん) 「びっくりしましたよ。片付けはもう終わったと話したら、『せっかく来たから』と本をたくさん買ってくださいました」 毎年秋になると桑畑さんは釜石特産の『甲子柿』を送り、神奈川生まれの佐々さんは釜石を「第二の故郷」と話すほどに釜石との縁が強くなっていました。 2020年に上梓した「エンド・オブ・ライフ」は「YAHOO!ニュース本屋大賞ノンフィクション大賞」に輝き、翌年、桑畑さんは佐々さんを釜石に招いてトークショーを開きました。 続く作品「ボーダー移民と難民」の出版を記念するイベントも釜石で開こうと計画し、ポスターも出来上がった矢先、桑畑さんのもとに佐々さんから一通のメールが届きました。 「釜石に行くことはできません。脳腫瘍になってしまいました」 2022年11月、佐々さんは悪性脳腫瘍と診断されます。 (桑畑眞一さん) 「まさかという思い、ショックでした」 2023年10月、病をおして第二の故郷・釜石を訪れて開かれたトークイベントが佐々さんとの最後の出会いになりました。 9月1日、佐々さんは帰らぬ人となりました。 享年56歳でした。 (桑畑眞一さん) 「2016年に出会ってすぐに『エンジェルフライト国際霊柩送還士』と『紙つなげ!彼らが本の紙を作っている』を一気に読みました。徹底的な取材力と推こうを重ねた末に編みだされた言葉に引き込まれました『夜明けを待つ』もすごくいい本多くの人に読んでもらいたい」 佐々さんの作品を朗読した小笠原景子さんは「佐々さんの死生観がすっと心に入ってきた」と話します。 (小笠原景子さん) 「小学3年の時に父を事故で失い震災後は2年の間に母と祖父母を立て続けに亡くしました。『残される家族も、引き裂かれるような悲しみを感じたとしても、見送り方を知っている(略)この大きな悲嘆をいつか乗り越えられるように生まれついているのだ』という佐々さんの言葉はすごく心に染み入りました」
桑畑さんは、時折、涙をうかべながら小笠原さんの朗読に聞き入っていました。 (桑畑眞一さん) 「朗読会の開催は春に佐々さん本人に許可をもらっていたんです。佐々さんとの出会いを何か記念に残すような事がしたかった。おかげで楽しい時間を過ごさせてもらいました、と言葉をかけてあげたいです」 佐々さんの死を受けとめて桑畑さんが感じた思いとはどんなものだったのでしょうか。 (桑畑眞一さん) 「今を生きろってことだよね」 桑畑さんは、佐々さんの作品の朗読会をいつかまた開いてみたいと考えています。
IBC岩手放送