【関東大震災から100年】いまあの大震災が起きたら…都市の火災対策は?
■高層建築での火災の問題も
一方、建物が高層化する現代の都市ならではの火災の危険性もあるといいます。東日本大震災では、中高層建物で火災が多く発生しました。揺れによる火災の約4割は4階以上の建物で発生していたというのです。さらに、震度6強以上の揺れが襲ってきた場合、防災設備や消火設備が強い揺れによって機能しなくなるケースが指摘されています。阪神淡路大震災では、中高層建物のスプリンクラーの約8割が地震で使えなくなったということです。平時には中高層建物の火災安全性能を確保してくれる消火設備や防火設備が、地震による揺れで機能不全を起こすとすると、中高層建築物での火災による被害は深刻なものとなる可能性もあります。
■建物の倒壊などで逃げ道がなくなる危険も
大都市の地震による火災で懸念すべきことは、建物倒壊とか、ブロック塀が倒れることによって道路が閉塞して使えなくなることだと廣井教授は指摘します。「迫りくる火災に挟まれたり、道路閉塞によって逃げ道を失ってしまい、そして逃げられないまま火に囲まれて亡くなるという、そういう事態が現在で懸念される被害像の1パターンかなと思います。」
■避難開始のタイミングは難しい。すぐ逃げずに消火することも選択肢の一つ
恐ろしい火災の魔の手から逃れるため、地震が起きたらすぐに避難すればよいのでしょうか?廣井教授は「風水害とか津波とかと違って、早めの避難が必ずしも最善とは言えないのが火災からの避難の難しいところだ」と指摘します。地震の発生後、飛び火などで火災が燃え広がらないようにするため、飛んできた火の粉を消したり、燃えそうな洗濯物を取り込む、窓を閉めたりする、そういう延焼防止活動をすることで火災のひろがりを防ぐことができるといいます。(廣井教授)「地震火災が発生したら、地域の中でやるべきことがたくさんあるんですが、それを全部捨ててすぐ逃げてしまうと、被害はかえって大きくなってしまうかもしれません。まずは火災の情報を共有する。そして1人では逃げにくい高齢者の方、要援護者の方たちには周囲が支援しながらいち早く避難してもらいつつ、みんなが助けあって火災を防ぎ、そして逃げるべきタイミングでみんなが避難する。地域の中で地震後の火災への対応の役割分担をぜひとも考えていただきたい」 現代の都市は、関東大震災のときと比べて道路も広くなり、安全な避難場所もたくさんできるなど対策は進んできました。しかし、同時に多くの火災が発生する地震をほとんどの人が体験したことがないことも大きな課題です。地震後にパニックになって多くの人が逃げ惑うと大混乱が発生します。地震発生後に地域の中でしっかり協力して緊急対応を行っていくためには、災害の発生前に、地域で課題を共有して議論しておかなければ、こうした行動はできるものではありません。行政任せではない、地域の防災をしっかり見つめることが求められています。