【関東大震災から100年】いまあの大震災が起きたら…都市の火災対策は?
■人口が多い所ではどうしても火災は発生する
しかし、1万世帯当たりの火災の出火率がいかに低くなっても、首都周辺などの人口の集中度はとどまるところを知りません。廣井教授は、「人口が増えれば必然的に火災の発生件数も増えることになり、火災の件数は決して少なくなったとは言えない」と指摘します人口が多く集中する地域では地震が起きると同時に多数の火災が発生してしまうのです。近い将来の大地震時においては、関東大震災を上回る出火件数になる可能性も十分にあります。消防署などでは高性能のポンプ車を配備しているなど、火を消すためのテクノロジーの能力自体はめまぐるしく進化してきています。しかし、1件の火災が発生した場合に複数の消防車が集結して火を消す現在の消防組織は、同時に同じエリア内で多数の火災が発生した場合、消すことができる件数はどうしても限定されてしまうのです。
■木造密集地域の解消はいまだ道半ば
さらに、木造建設物が集中する木造密集地域で火災が発生するとどうしても燃え広がって大規模な火災になってしまう危険性があります。東京都では木密地域の解消にむけて、防災力を向上する取り組みを集中的に進めています。補助金を投入するなどして、老朽化した建築物の建て替えや不燃化を促進するとともに、道路や公園などの公共施設を木造住宅密集地内に整備することで、できるだけ火災が燃え広がらない構造に変えていこうというものです。東京都の木造密集地域は、2016年にはJR山手線外周部を中心に約13,000haに広がっていましたが、2020年には約8,600haにまで減少しました。それでもすべての地域で解消するまでにはまだまだ遠い道のりとなっています。
■火災による被害を軽減するには「地域の消化能力」を高めることが重要
大地震で火災が発生した場合に一番大切なのは、近くにいる人たちが、火がまだ小さいうちに消し止めることです。関東大震災でもこの地域住民の力によって多くの火災が消し止められました。東京市全体で発生した134件の火災のうち、42.5%が初期消火されていましたが、その半数は地域住民の手で消火されていたというのです。しかし、その地域の力が必ずしも進化しているとは言えない状況だと廣井教授は指摘します。「初期消火で重要なのは、まずは火災の情報を共有したうえで、バケツで水をかけたり消火器を使って消し止めること。地域の人たちがこうした行動に出ることが重要ですが、地域の状況をみると少子高齢化社会に加え、地域コミュニティについても関東大震災当時と比べて衰退しているところもありそうです。そういった意味では、地域の中で消火活動をするための能力というものはもしかしたら下がってるかもしれません。」そして、首都直下地震などで火災による被害を減らすためには、みんなで力を合わせて火を消す地域消防力を高めるやり方を探るべきだといいます。(廣井教授)「これは1人2人ではできない話なので、町内会とか自主防災組織などで、地域の中で火災が起きたらどう対応すればよいか、みんなで考えるような取り組みがとても重要だと思います。」